【日旅連総会特集】日本旅行 取締役 秋山秀之 氏に聞く


日本旅行 取締役 個人旅行営業統括本部長 秋山秀之氏

新しい旅行形態の「想像」と「創造」

 日本旅行の「個人旅行営業」について、今年度の重点施策を聞いた。(聞き手=本社・森田淳)

 ――昨年の個人旅行営業を振り返ると。

 秋山 4~5月は受注がほぼ消滅した。7月もGo Toトラベルキャンペーンが始まったものの、東京発着の除外の影響が大きく、マインドは高まらなかった。10月に東京除外が解除されるまでは厳しい状況だった。

 東京除外が解除されたと同時に、個人旅行は猛烈に動きだした。11月の国内旅行商品「赤い風船」の販売は前年同月比で174%。例年のピーク時である8月の売り上げに迫る勢いだった。感染が比較的落ち着き、メディアでも人が動いていいとの論調が広がったことで、人々のマインドが変わった。ただ、ビジネス需要が減り、テーマパークが入場制限するなどで、東京着は伸びず、それ以外のエリアが活況を呈したという、これまでにはない動きがあった。12月はGo Toが一時停止され、前年比92%に落ち着いた。

 1年を通してみると、赤い風船は前年比で55%と約半分の販売。非常に厳しい1年だったのは間違いない。

 ――Go To事業に先立って各県が県民限定キャンペーンを行った。

 秋山 県民限定や宿泊単品に特化した施策が多く、各県の取り組みが始まった6月ごろから少しずつマーケットが動き始めた。われわれは全てに関与することはできなかったが、一部の県では大きな実績が上がった。

 われわれは観光を通じた地域振興を図る地方創生・事業共創事業に力を入れている。行政に対しては、今回のようなイレギュラーなものに限らず、地域の振興を図る継続性のある施策を考え、提案していかねばならない。

Go Toも単にお客さまをお送りするのではなく、地域の継続的な振興につなげることが大事だと思っている。

 ――今年の市場見通しは。

 秋山 Go Toトラベル事業は、規模や内容はまだ不明だが、6月までの延長が決まっている。昨年のように、しっかりと需要を取り込むこととともに、各地域で行われる観光振興施策にも積極的に取り組むことが重要だ。日旅連の皆さまをはじめ、各施設さまと協力した取り組みが必要だ。

 7~9月は、旅行需要はある程度戻ると思うのだが、合宿やMICE需要など大人数での催行が伴うものは戻りが難しいと見ている。新しい旅の形を企画・提案することが重要だ。

 10~11月は、当社の「赤い風船」のフリープラン型商品とともに「おとなび・ジパング」のようなエスコート型でコロナ対策を十分考慮した新しい旅行の形を企画に盛り込んだ商品の需要があると思う。

 寒くなるとコロナが再び拡大する懸念がある。11月か12月の中旬までに、今年1年の計画をやり切る必要がある。

 ――新しい旅の形として、ワーケーションやブレジャー、3密回避などが言われている。

 秋山 言葉としてはよく言われるが、実際にどう商品化して、お客さまに提供するか。前提としてコロナ対策が最大の誘致、誘客、顧客サービスの根幹になることは間違いない。そこを踏まえた上で、新しい旅行形態を「想像」し「創造」することこそ重要だ。

 今までは簡便に商品を購入できる仕組みの構築に力を入れてきた。これからはお客さまのニーズをじっくり聞いて商品を作り上げる、そんな旅行会社の本質に戻るような取り組みを行わなければならない。流通拡大の最大化が主軸である販売のウェブ化が進む中でも重要なことだ。そのようなビジネスが全体の2~3割は必要だろう。

 ただ、販売のウェブ基軸は避けて通れない。当社は今の販売形態について、3年ぐらいかけてなだらかに変革する計画だったが、コロナ禍でそれを加速し今年実現させる必要が出てきた。

 だが、ウェブ基軸イコールオンライン販売ではない。今まで培ってきたお客さまへのホスピタリティ、コンサルティング力は、間違いなく当社の財産だ。

 「マルチチャンネル」から「オムニチャンネル」に思考を変えていく。

 最近「空間店舗」という言葉を使っている。路面に店舗がない場所でも、ウェブや電話を使ってリアル同様のホスピタリティを持ったお客さまサービスをご提供する。場合によっては外商のようにお伺いする。トータルの力で当社の商品を選んでいただくというオムニチャンネル化を進めたい。

 純粋なオンライン販売については、中心となるのは当社の一番の強みでもあるJRセットプランだ。業界でナンバーワンのシェアを誇っているが、確固たるものにする。

 ――赤い風船はどこまで回復を見込むか。

 秋山 19年比で75%ほどの回復を最低ラインとして目指している。インバウンドも法人も依然厳しさが見込まれる中、個人旅行でどう売り上げを上げるかが会社全体としても問われているテーマだ。当然、より以上の回復を最終的には目指す。

 ――日旅連会員に向けて。

 秋山 当社の業務に多大なるご協力を頂き、深く感謝している。昨年もコロナ禍という大変厳しい中でさまざまなご協力、助言を頂いた。

 インバウンドの成長に隠れていたが、ここ数年、国内の需要が少しずつ縮小していた。小さくなったパイの中で、われわれがどう事業を進めるか。先ほど申し上げた通り、新しい旅行形態を創出し、提案しなければならない。

 今は集まりにくい状況だが、リモートなどを使い、議論をする頻度を高めていけたらと思う。

 日旅連の皆さまと、より強く、アライアンスを組んで、新たな価値を共創したい。

 

日本旅行 取締役 個人旅行営業統括本部長 秋山秀之氏

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