【日旅連総会特集】新中計の狙いと施策 日本旅行 小谷野専務


日本旅行 小谷野悦光代表取締役専務

日本旅行 小谷野悦光代表取締役専務

最大の成果へ、先行的取り組み

 日本旅行は今年1月、新しい中期経営計画「TRANSFORM(トランスフォーム)2025」をスタートさせた。2017年からの中期経営計画を1年前倒しで終了させ、新しい計画の実施に踏み切った異例の展開だ。同社の小谷野悦光専務にその意図や具体的取り組みを聞いた。(聞き手=本社・森田淳)

 ――昨年の回顧から。

 小谷野 ゴールデンウイーク(GW)の10連休はインパクトがあった。国内、海外とも大きく数字を伸ばし、われわれにとって大きな追い風となった。

 一方で、自然災害にも触れなければならない。一昨年は西日本、昨年は東日本など広いエリアで台風、豪雨の被害を受けた。

 災害は夏から秋にかけて、このところ毎年発生している。私見だが、昨年のGWは夏の災害を見越して、夏休みの家族旅行を前倒しで行ったファミリーが相当いたのではないか。

 経営戦略を立てる上で、災害もあらかじめ織り込まなければならないと痛感した1年だった。

 ――会社の業績は。

 小谷野 決算発表を2月末に行うので今はお話しできないが、いい数字になったと言える。GWの販売増もあり、中間期は44年ぶりの黒字を確保。下期は災害の影響を受けたものの、上期の数字がそれを吸収した。

 ――2017年からの中期経営計画「VALUE UP(バリューアップ)2020」も功を奏していると。

 小谷野 3年間取り組んだことの成果が、GWなどと相まって表れたということは言える。個人旅行営業はインターネット販売の強化、法人営業は大型イベントの取り扱い拡大など、着実に成果を上げている。インバウンドも日本全体の誘致の流れを受けてしっかり取り組んだ。

 ――新しい中期経営計画「TRANSFORM2025」が始動した。前の中計を1年前倒しで終え、新たな中計に切り替えた異例の展開だ。

 小谷野 われわれ旅行業は、災害やテロ、感染症、世界的な不況など、外部要因に大きく影響される。経営は毎年成果を上げ、黒字を出すことが基本。何か起きた場合、単年度で黒字を出すには即効性のあることに取り組まなければならない。

 しかし、中期的に取り組むべきことを後回しにすれば、世の中の変化についていけず、将来的にお客さまに選ばれない会社になってしまう。このバランスをどう取るかが悩ましいところだった。

 今回の中計では、最終年度の25年に最大の成果を上げるために、前半の3年間にかなりの先行的な取り組みを行う。単年度で必ず実績を上げるという今までの経営方針の縛りから脱却する。親会社のJR西日本の理解のもと、従来の方針をがらりと変えたのが今までの中計と大きく異なる点だ。

 世の中の変化のスピードが早く、先々のために必要な手を今、打っておかなければ後になってアジャストできないだろうという認識のもとに今回の計画を立てている。

 ――具体的取り組みは。

 小谷野 この3年間はかなりの数の新卒社員を採用し、団体営業部門を中心に人員を配置する。

 首都圏など大都市では、今までわが社が弱かった大企業や、世界でグローバルな事業を行う企業に向けた営業の強化。地方では、地域の活性化やお客さまを誘客するイベントなどのお手伝いをする事業に一層力を入れる。誘客事業は今までの中計でも取り組んできたが、要員の関係もあり、地域により取り組みにばらつきがあった。今回、組織改正で本社に「全国営業推進部」を設け、地域の支店への支援体制を強化した。これまでやってきたアウトの仕事が取り組みやすいのはもちろんだが、目先の利益よりも将来的な利益を重視する。

 ――もう一つの柱、個人旅行営業は。

 小谷野 販売チャネルはネットの成長が著しいものの、店頭販売の比重がまだ高い。そのような中、「店に置いている商品がネットで販売している商品と同じでいいのだろうか」「今までのようなビジネスモデルでいいのだろうか」と、社内でかなり議論してきた。

 店頭では、「わざわざ足を運んででも買っていただける商品」の販売、そして「どのような接遇を行うべきか」をしっかり考える。今までのおよそ30年間、店舗は「仕事をいかに簡素化するか」を追求した。これからは逆に、店舗ならではの旅行の提案や手配など、手間のかかる仕事に向き合わなければならない。今までの発想を変えなければ今後の成長はない。中計の期間の中で方向性を明確にしたい。

 ――日本旅行直営とグループ2社のリテール部門を今年中に新会社に統合するという。

 小谷野 グループ内で、店頭のサービスを高いレベルで平準化することが目的の一つ。今まではさまざまな経緯があり、別会社方式を取っていたが、サービスに差異があった。これを均一化する。日本旅行グループの店舗として、最低限持つべきサービス水準を明確にし、要員の効率的、効果的運用と合わせて、現場で徹底する。

 ――団体営業に人員を集中配置する一方、個人旅行営業の体制は。

 小谷野 お客さまと直接向き合う重要なポジションであり、もちろん積極的に取り組んでいく。

 ――中計では「店舗網の最適化」と表現しているが、「合理化」ではないと。

 小谷野 やみくもに店舗を減らすなどといった、単純な合理化は考えていない。しかしながら、地域の特性やお客さまの動きに応じた統廃合や、各店舗の繁閑期に合わせての要員運用等については一層の工夫をしていく必要があると思っている。

 ――今年の当面の課題は。

 小谷野 新中計で社内的に、これまでとは違った動きをすることになる。社員にどれだけ意識を浸透させられるかが課題だ。

 営業面では、新型コロナウイルスの影響が懸念されるが、オリンピック・パラリンピックについては、われわれなりにしっかり取り組む。海外から多くの人がおいでになる。東京での開催だが、親会社とも協力し合い、西日本をはじめ、さまざまなエリアにお連れできる態勢を作りたい。

 ――日旅連会員にメッセージを。

 小谷野 旅連の皆さまとは、さまざまな会合の場で会社の取り組みについて議論している。これまで以上に活発に議論したい。

 地方での誘客事業を進める上で、われわれは旅連の皆さまとベクトルを合わせなければならない。ただ、地域によっては関係性に強弱があったことも否めなかった。旅連の皆さまと同じ目線で地方への誘客に一層力を入れたい。

日本旅行 小谷野悦光専務

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