【旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 176】新型コロナウイルスへの経営対応63 原理原則5 人心の喚起 佐野洋一


 (3)意欲を生みだす方策

 意欲を生みだすために、どんなことをしていったらよいか?について、前回に続き提案していきたい。

 (ⅲ)集合研修をやる

 現場で実務をやりながら、上司や先輩から教えるような指導をOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)と呼ぶ。これは多くの旅館でそれなりに行われていると思う。一方で、現場業務を離れて行う研修(ここでは「集合研修」と呼ぶ)があるが、そういうものをかつてやったことのない旅館は意外に多い。筆者の肌感覚で言えば、10軒中9軒がそうではなかろうか。研修をやればよいというものでもないが、やるのとやらないのとでは、かなり違いがある。

 研修は、もちろん知識や技能を高めるために行うものだが、意欲に結びつく効果も十分期待できる。これまでの研修実施経験から言うと、大半の旅館で「このような研修をこれまで受けたことがなかったので、とても良い勉強になりました」といった感想がじつに多い。教わることの中身もさることながら、毎日やっている業務とは違うこと、というだけで、従業員にとっては新鮮なのだ。

 集合研修にもいろいろなスタイルがある。知識や考え方を学ぶ講義学習、基礎的なマナーなどを身に付けるトレーニング、接客場面などを模擬で演じるロールプレイング、話し合いや作業を通じて発想力や思考力などを高めるグループワークといったものが挙げられる。

 スタイルは、目的に応じてそれぞれに選べばよいと思う。そしてこれらをさらに意欲づくりに生かすには、研修のメニューやプログラムそのものを社員に考えさせるとよい。

 今は毎日が忙しく、研修どころではないかもしれない。しかしそのような中でも、あえてそういう日・時間をとって行うことをおすすめしたい。その日一日の売り上げと、能力や意欲といった無形の将来財産、そのどちらを大事にするか、ということである。

 (ⅳ)商品を考えさせる

 商品のうち、多額の投資を伴わずオペレーションレベルで組み立てられるものは、社員に考えてもらう仕組みをぜひ作っていただきたい。分野としては次のようなものがある。

 ・宿泊プラン

 ・料理企画

 ・館内イベント

 ・各種販促企画

 ・魅力を高める仕掛け

 いずれも「会社の実利」に直結することに意味がある。「誰か1人で」では大した発想も出てこないので、チームを編成して、そのチームのタスクとして考えてもらうようにするとよい。

 またこういうことは、頭の中だけで考えてもらちが明かない。成功確率を高めるためにも、幅広いアイデアソースが必要だ。最近のトレンドや、よそで行われている事例を調べる、あるいは近隣他館の企画動向を探ってみるといった「情報収集」をきちんと下敷きにしてもらうようにしよう。なお「情報集め」に関しては、本連載<171>~<172>でお伝えしたことも参考にしていただければと思う。

 意欲との関連で特に大事なのは、「やった結果」を検証することだ。例えば「宿泊プラン」なら、それで何組、何人の予約が入って、いくらの売り上げになったか、ということを必ず確認しよう。それが「やりがい」の実感につながる。

(リョケン代表取締役社長)
       

 
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