【旅館経営 タテ・ヨコ・ナナメ 146】新型コロナウイルスへの経営対応33 ホームページのてこ入れ4 佐野洋一


 コロナ禍突入以来、小欄ではその中で講じていくべき経営対応について考えてきた。そしてここしばらくは、ホームページ(HP)へのてこ入れを提案している。「コロナ禍の今だからこそ見直してみませんか」と。

 まだまだ予断の許されない状況だが、HPの見直しは、ぜひ続けてお考えいただきたいテーマである。

 (8)ブランディング

 HPが担うべき役割は大きく二つある。集客プロモーションとブランディングだ。旅館では、このうちブランディングの面で、やるべきことが多いように思う。

 HPを、ただ待ち構えているだけのものとしているなら別だが、今や多くの旅館が、HPに引き込み、予約に結びつけるためのプロモーション対策をあれこれ打っている。プロモーションの成果は、ざっくり言うと「投入量×獲得率」のかけ算だ。「獲得率」の中身はいくつかに分解できる―開封率、閲読率、関心喚起率、HPへの遷移率、予約率。そしてこれらすべての「率」を、高くも低くも変えるのがブランドである。

 貴館では、HPの中でブランディングのためにどんなことをやってきただろうか? 見渡した限りでは、どうもそこが弱い。

 ブランディングとは?…ごく簡単に言えば、認知度を高め、好意度を高める、そして惚(ほれ)れさせるための活動である。ただしブランドは、こちらがアピールしたからといって手に入るものではない。お客さまや世間に「そのようなもの」として受け止められてはじめて成り立つものである。

 旅館はたいていエリアマーケットで商売している。だから、例えば「地域で一番」の評価を得ているなら、これは立派なブランドだ。しかし、どこでもそうなれるわけではない。そうでない大多数の旅館では、どこかでよそとの違いを明確にしていくことが戦略となる。ではそのためにどんなことをしていくべきか?

 老舗旅館なら、昔からの歴史やそこにまつわるエピソードを伝えるのもよい。

歴代の当主が受け継いできた商売や地域との関わり、歴史に名を残した著名な人物の逗留逸話など。反対に新しい旅館なら、在来の旅館とは違う新しいスタイルやポリシーを印象付けることが切り口となるだろう。

 料理に自信があるのは結構なことだが、ブランディングを意識するなら、その裏付けとなる情報を示すことだ。その料理がいかに普通と違う価値のあるものか、料理する人がいかに優れているか、といった事実を伝えていくことを考えよう。

 近頃では、ネット予約サイトやクチコミサイトでのランキング、格付けといった評価をHPに掲げるところも多くなってきたが、これも大いに結構だと思う。

 施設や備品にも同じことが言える。旅館は情緒性を売る商売なので、あまり細かい解説ばかりするのも考えものだが、ポイントとなるものはそれなりにアピールしてよいだろう。

 接客サービスの良さを伝えるには、「心をこめたおもてなしをいたします」のような言葉を百遍繰り返すよりも、お客さまの喜びの声や、感動を呼ぶエピソードを紹介するページを作ってみることをおすすめする。

 いずれの場合も大事な観点は、「それがどうした」ということだ。「お客さまにとってなんぼの価値があるか」を考えたい。

(リョケン代表取締役社長)   


  

 
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