【旅館経営ワンポイント講座 19】「連帯保証制度」廃止の始まりか 渡辺清一朗


 そろそろ日本が世界に誇る悪習といわれて久しい「連帯保証制度」の廃止の始まりとなるのか。

 私事で恐縮だが、法人の連帯保証で40億円という保証債務を負った経験のある者としては過ぎていった過去のことではあるが他人ごとではない。この20年間、企業再生の現場において連帯保証に悩み苦しむ経営者と数多く出会ってきた者としても、少しでもまともな方向に変化していってほしい事案である。

 金融危機が発生した1997年当時、年間自殺者3万人のうち1万人が経営失敗による連帯保証が原因とされた。そこから紆余曲折、2017年に「経営者保障ガイドライン」の運用が始まった。2022年には新規融資の33.1%が経営者保証のないものへと変化した。そのような中、2023年4月1日より経営者保証の廃止に向けて大きくかじを切りそうな状況となっている。

 これまでも、2022年8月31日の金融行政方針で経営者保証に依存しない融資慣行の確立が重要課題とされ、2022年10月28日の総合経済対策では個人保証に依存しない融資慣行の確立に向けた施策を年内に取りまとめると公表され、2022年12月23日に公表された経営者保障改革プログラムでは経営者保証の非保証が原則とされるなど転換への新たな動きがあった。

 それではなぜ大きくかじを切るのか。その原因は三つあると考えられる。

 (1)失われた30年でこの国の活力は明らかに減退した。その大きな一つの原因は起業時のリスク。中でも資金調達時の個人保証リスクが大きな足かせとなっていて、失敗したときの悲惨さを恐れるあまりその一歩が踏み出しづらいこと。

 (2)労働力不足解消の一つの方法は生産性向上のための投資や昇給を実現できない企業を整理し、労働力の流動化を図る必要がある。そのとき、連帯保証が大きな障壁となっていること。

 (3)コロナ禍の3年間で企業の金融債務は50兆円増加し、そのうちいわゆるゼロゼロ融資の増加は23兆円。その返済開始のピークは2023年7月から2024年4月となる。おそらくゼロゼロ融資の30%程度は債権回収に行き詰まり債権放棄となるのではないかと予想される。実質は廃業型の事業整理を自己破産なしに行う必要があるということ。

 特に宿泊・飲食サービス業においては、年商を上回る債務を負う企業の割合がコロナ禍前25%から現状40%に迫っており状況は深刻だ。

 ただし悪い話ばかりではない。ゼロゼロ融資を受けた企業でも前向きに生き残りをかけて進む企業には、民間ゼロゼロ融資からの借り換えに加え、他の保証付き融資からの借り換えや、事業再構築等の前向き投資に必要な新たな資金需要にも対応する新しい保証制度も創設されている。私がかかわる企業でもすでに数社が「経営行動計画書」を作成し金融機関との交渉を開始している。

 詳しくは中小企業庁のホームページを参照されたい。

 https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/sinyouhosyou/karikae.html

 前を向いて進む者は必ず光を見いだすことができると信じたい。

(EHS研究所会長)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒