【旅館ホテルのおもてなし 31】お体の不自由なお客さまへ3 大谷 晃


 ここからは実際に、高齢者や身障者のお客さまが旅館ホテルにお越しになった場面に沿って見ていくことにしましょう。

 目の不自由なお客さま

 視覚障害のお客さまにはどのような対応が必要か見ていきましょう。一言で目が不自由といっても、まったく見えない方から、ぼんやりと見えるという方まで、障害には差があります。そのことをまず理解しておく必要があります。

 おもてなしをする上で最初に知っておかなければならないのは、目の不自由な方たちが、日ごろどのようなことにお困りなのかということです。それが、目に障害のあるお客さまをおもてなしする基本となります。

 お困りのこととしては、屋内外の段差や溝などに足を取られやすい、「宿泊カード」に記入できない、館内施設の表示や掲示板、利用案内が読めない。また、一度の説明では館内の設備や施設の配置などが分からず、「あちら」「こちら」「もっと先」などと言葉で説明されても理解できない。支払い時に紙幣や硬貨の確認に時間がかかることなどがあります。

 これらを踏まえた上で、目の不自由なお客さまにご満足いただける接客を見ていきましょう。

 ●お出迎え

 視覚障害のお客さまをお見かけしたら、すぐに駆け寄ります。「いらっしゃいませ。お待ち申し上げておりました。〇〇係の〇〇と申します。何かお手伝いできることはございますでしょうか」と、ハキハキした声で、お手伝いを申し出ます。
 行動に移る前に、まずお声がけをすることが鉄則です。いきなり体に触れたり、いきなり説明に入ることはお客さまを戸惑わせます。手に取れる物は手に取っていただき、そうでない物は仲居が色や形などを言葉にして伝えます。

 また、つい同行の方に話しかけてしまいがちですが、ご本人に向かってお話しすることが大事です。主役はあくまでも目の不自由なお客さまであることを忘れないようにします。

 ●チェックイン

 宿泊カードへの記入は、お客さまの承諾を取った上で、同行の方にお願いするか、お1人でご宿泊の場合は、フロント係が代筆します。

   *    *

 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。

 
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