【旅館ホテルのおもてなし 29】お体の不自由なお客さまへ1 大谷 晃


 接客という目に見えない商品で顧客満足を追求する旅館ホテルですが、その内容にはこれまで以上のスキルアップが求められています。

 ●心に響くおもてなし

 わが国では2006年に「バリアフリー新法」が制定されました。その結果、階段や段差が解消されるなどして、多くの建物で誰もが利用しやすい環境に整えられつつあります。それだけ高齢者や身障者も外出しやすくなりました。

 とはいっても、すべての施設がバリアフリーではないため、スタッフが適切なサポートをできていないこともあれば、バリアフリーに設備を変えただけにとどまっている旅館ホテルも多いのが現実です。このような問題を解消するには、旅館ホテル側の姿勢はもちろんですが、スタッフも意識を変えることが求められます。それは「高齢者や身障者へのフォローを大変なことだ」と思い込んでいる可能性があるからです。

 そうではありません。ほんのささやかな気づかいで十分なのです。もし自分の親なら、自分の子供ならと考えたら、こうしてあげよう、ああしてあげよう、こんなこともしてあげたいと思えば良いだけのことなのです。ささやかな気づかいは「やさしい想像力」によって生まれるものなのです。

 ●対応できる施設・設備

 まず、高齢者や身障者に十分対応できる施設・設備であるかどうか、見直すことから始めましょう。

 入り口のドア一つとっても開閉がスムーズでなければ、その時点で出入りが困難です。一段高くなった横木が置かれた、あがり框(かまち)がある場合も同様です。障害になります。他にも、浴室やトイレの床はすべりやすくないか、段差があったりはしないか、手すりは付いているか、サポートするスタッフは十分いるか、などを改めて見直しましょう。

 高齢者や身障者のお客さまにとってはこのような一つ一つのことで、旅館ホテルでの滞在を楽しめるかどうかが左右されます。旅館ホテルで改善できることは改善し、仮にまだなら、スタッフのサポートで補えるかどうかを常に考えておくことが必要です。

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 ■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。

 
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