
東京オリンピック・パラリンピックの誘致活動で使われた「お・も・て・な・し」という言葉も、最近ではすっかり定着した感があります。
しかし、この言葉が意味する本当のところを私たちは真に理解しているでしょうか。おもてなしとは「幸せのお手伝いをする」こと。旅館ホテルの本来の役目がそこにあります。
旅館ホテルにお越しになるお客さまの目的はそれぞれ異なります。温泉につかりながらゆっくりしたい、観光地をめぐりたい、お酒や地元の料理を味わいたいなど。その希望をかなえて差し上げるために、スタッフはお客さま一人一人に合った、包み込むようなおもてなしを常に考えることが必要です。お客さまに対してマニュアル化した対応では、ニーズに応えられないのが旅館ホテルなのです。すべてのお客さまに「同じおもてなし」では満足していただけません。
「おもてなし」というと、特別なことをしてお客さまに喜んでいただくイメージがありますが、けっしてそうではありません。
旅館ホテル業は「やさしい想像力」がなにより大切なビジネスです。お客さまのご要望にいかに気づき、それを実現するかです。それによってお客さまに満足いただき、それがまたご来館いただけることにつながります。特に宣伝にお金をかけたり、大がかりな設備を設ける必要はないのです。
旅館ホテルの仕事に初めて就く人は、戸惑うことも多いでしょう。女将や先輩などから指導やアドバイスを受け、お客さまにこうして差し上げたい、ああして差し上げたいと思っていることを、日ごろから少しずつ形にしていくようにしましょう。
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■日本ホテルレストラン経営研究所=ホスピタリティ業界(旅館、ホテル、レストラン、ブライダル、観光、介護)の人材育成と国際交流へ貢献することを目的とするNPO法人。同研究所の大谷晃理事長、鈴木はるみ上席研究員が監修する書籍「『旅館ホテル』のおもてなし」が星雲社から発売中。問い合わせは同社TEL03(3868)3275。