
なにしろコロナ禍との闘いも長丁場となった。この間、本コラムでは販売政策についても何度かふれてきた。このうち「Go To対応策」を別にして2回ある。
1回目は昨年6月下旬。ほぼ全国的に休業を余儀なくされた第1波が収まって、少しずつ需要が戻り始めた時期に「今とるべき販売政策〈121〉」として、次の4点を提言した―(1)安売りに走らない、(2)今こそ直販を、(3)利用目的別アプローチ、(4)企画商品を増やさない。
そして2回目はGo Toトラベルで旅行需要が上り坂にあった10月中旬。「Go To終了に備える〈129〉」として、(1)過去の利用客への再アプローチ、(2)季節の魅力発掘、(3)地域催事等の活用、(4)情報発信、(5)次なる商品の用意、(6)地道な営業活動―の6点を提案した。
これらのことは引き続き有効と思うが、今の状況はその2回の時期いずれとも微妙に違う。新規陽性者数は第1波の時よりもむしろ高い水準で推移しているが、人々の警戒心はその時と比べてかなり緩んでいると捉えられる。そこで「感染懸念下のスキ間作戦」とも言うべき対応策を挙げてみたい。いくつかはすでに語られていることだが、このフェーズにおいて改めて検討されてよいと思う。
(1)地元市場
「都道府県境を跨いでの移動」を自粛することが「社会道徳として」今は求められている。しかしその裏返しとして、大都市圏から離れた地方では地元客の動きが比較的堅調である。
旅行は、どちらかと言えば目的地が遠いほど面白さや情緒が味わえるものであり、その最大のファクターは「観光」だ。しかし見方を変えれば、旅行の目的は必ずしも観光だけではない。それを通じて実現しようとする別の目的もある。休む、温泉に漬かる、普段とは違う食事をする、親睦を深める…。
旅館を利用する際、たいていこれらに共通して冠せられるのは「ゆっくり」という言葉だ。つまりこの「ゆっくり」というニーズを満たすようなもの(場・食・サービスなど)を提供できることを、これまでよりも前面に出して強調していくことで、地元客の掘り起こしが考えられないだろうか。
(2)家族限定・少人数限定企画
もともと一緒に暮らしている家族間では感染の心配がほとんどない。だから「家族限定」と銘打つことで、いつもと変わらぬ家族で過ごすという安心感を印象付けることができる。
旅館に泊まる以上、ずっと誰とも接しないわけでもない。家族限定としたところで、感染の懸念はあまり変わらないかもしれないが、家族以外の人と食事などを共にするわけではないということが、当事者にとって宿泊旅行することへの一種の「言い訳」作りになる。
一歩進めて、小規模の旅館などでは、今の時期、自館を「家族客限定の宿」として特化してしまう戦略もある。
大学などの「謝恩会」は、自粛ムードの中ですっかり縮小してしまった市場だが、そんな中でも東京のあるホテルでは、なんとか需要を掘り起こそうと、「プチ謝恩会」という名で少人数の食事会プランが打ち出された。「プチ」「少人数」というキーワードがここでのポイントだ。
(リョケン代表取締役社長)