回復のスピードが加速 キーワードは多様性
コロナ禍を乗り越え、観光需要の本格的な回復が期待される2023年。観光産業にとってはリ・スタートの年となるが、コロナ以前への回帰にとどまらない、新たな戦略が求められている。日本観光振興協会の久保田理事長に現状や課題、観光立国復活に向けた展望などについて聞いた。
――(聞き手・内井高弘)2022年はどんな年だったか。
21年に続いて、新型コロナの影響が色濃く残った年で、コロナとの共生を意識せざるを得ない状況が一段と強まった。年半ばには第7波が収まり、観光も回復の兆しがでてきた。特に、水際対策が緩和され、10月11日から「全国旅行支援」が始まると一気に旅行機運が盛り上がり、年後半はいい流れになってきた。行動制限が続き、消費者のストレスもたまっていたが、景気が悪い中でも観光・旅行することで解消しようというのは、観光の持つポテンシャルがいかに高いかを物語っている。
大きな出来事の一つは9月に開催された「ツーリズムEXPO」の成功。実に4年ぶりの東京開催で、コロナ禍の中、どれだけの人が来てくれるのか心配されたが、来場者は12万人を超えた。業界人も一般の方も明るい笑顔で楽しんでいたのが印象的だった。
「業界の仲間と4年ぶりに会え、一緒に仕事ができた。よく開催してくれた」という業界内の声や、業界外の方から「観光を復活させようという熱気が伝わってきた」との言葉をいただいた。明るい未来が見えたようで、主催者冥利に尽きる。
――日観振は台湾との窓口を兼ねているが、11月に台北市で「台北国際旅行博(ITF2022)」が開かれた。
日本からは約50団体が出展した。特筆すべきは日本側が3年ぶりに現地を訪れ、自らブースを設営・運営したことだ。現地の人と直に接し、プロモーションできたのは意義深い。蔡英文総統が日本ゾーンに立ち寄り、励ましの言葉もいただいたのもうれしい出来事だ。会期中の入場者数は前年比72%増の約20万人で、大変盛況だった。
――旅行者が増えることは歓迎だが、一方で人手不足がクローズアップされ、サービス低下も指摘された。
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