【教育旅行レポート】広島県武田高等学校 四国・兵庫県方面 21年12月13日~16日


ニワトリとの触れ合い

SDGs学習を深耕する旅 体験した学び、自分のものに

 武田高等学校(広島県東広島市、竹村豊子校長)は1967年創立、創立55年を迎える中高一貫校。建学当初から「世界的視野に立つ国際人の育成」を掲げ、世界各国の学生との交流や異文化フォーラムを積極的に行うなど、グローバル教育に取り組んできた。またこの1、2年で急速に関心が高まってきたSDGsについても、3年前から学校全体で積極的に取り組むことを宣言。総合的な学習の時間には、生徒が関心のあるSDGsゴールごとに3、4人のグループに分かれ、探究学習を行っている。

 高校2年生での修学旅行は、これまで国際交流体験、英語での研修などを目的として、シンガポールや香港・マカオで実施してきた。しかし、一昨年に続き昨年も新型コロナウイルス感染症拡大などの影響で海外修学旅行が中止となった。

 コロナ禍が長期化し、海外修学旅行の実施めどが立たない中、2021年度は国内での修学旅行に変更することを4月に決断。SDGsをメインテーマに据えた学習内容にする方針を固めた。「海外に行けないのならば、その分、付加価値のある旅行にしなければならない。SDGsは、生徒たちが日ごろから学習面をはじめさまざまな場面で取り組んでおり、短い準備期間でも学びを深めやすいのではと考えた」と松本達雄教頭は語る。

 SDGs学習が可能な旅行先を旅行会社に要望し、提案を受けたうち、研修内容に加え比較的広島に近いエリアで実施できる四国、関西でのプランに決めた。「コロナ禍ということもあり、万が一病人が出た場合の危機管理対応などを考慮した」と松本教頭。

 その21年度の修学旅行は、12月13~16日に3泊4日で実施した。1日目が香川・金刀比羅宮の参拝など。2日目は徳島県上勝町での、ゴミを出さない生活や過疎の町の新たな価値づくりに関する体験学習。3日目に兵庫・淡路島にあるファームビレッジ「タネノチカラ」で農場体験を通したSDGs学習を行い、4日目に兵庫県三木市のテーマパーク「ネスタリゾート神戸」でアトラクションを楽しむという日程だ。

 2日目に訪れた上勝町は、日本で初めて、無駄や浪費をなくしてごみを出さないこと「ゼロ・ウェイスト」を宣言した町。研修では、SDGsの探究学習グループに分かれて、同町が行っている45種類のゴミ分別の体験や、季節の木の葉などパック詰めにして販売する「葉っぱビジネス」の栽培地見学や商品化体験などを実施した。

 3日目のタネノチカラでは、耕作放棄地の伐採体験や土づくり体験、ニワトリとの触れ合いなどを行った。体験では、普段食べている鶏肉の多くが急速成長させたブロイラーであるといった「食」の現実や課題、環境を壊さない持続可能な農業について学ぶなどした。

 旅行中は毎日就寝前に、その日の研修内容について、学校が1人1台貸与して学習に利用しているiPadから、生徒に感想文を提出させた。その中では、「自分が食べているものへの意識が変わった」などの感想のほか、「土づくりの大切さを学べた。学内で育てている作物用に、コンポストでたい肥作りができるのではないか」などのアイデアを挙げた生徒もいた。

 旅行後には、生徒間で「今のままではいけない。学校でももっとできることがあるのではないか」との機運が高まり、3年生に使用済みの参考書の提供を呼びかけるといったリユースの取り組みも始まった。松本教頭は、「修学旅行は五感を使って見聞を広げるのが第一の目的。修学旅行の体験活動を通して今までは机上のものに過ぎなかったSDGsをより身近に感じ、『自分ごと』にできたことで、学校生活の中への落とし込みが進んだ」と手ごたえを語る。

 同校のSDGs学習は、3年生でのキャリア教育にもつながっていく。将来、仕事をする際に自分がSDGsの何番のターゲットに貢献したいかを考えるのだ。「今回実体験したことは確実に生徒の心に響いており、今後、進学を目指す中で指針の一つとなるはず」と松本教頭は期待する。

 最後に旅行会社や宿泊施設への要望として松本教頭は、SDGs学習をテーマとした修学旅行のパッケージ化を挙げた。今回の修学旅行では宿泊先での食事の量が多く、食べ残しが多く出る場面があったという。松本教頭は「SDGsを学んだ後に、自分たちが食べ残しをたくさん出してしまうことに自己矛盾を抱え、憤っている生徒もいた。宿泊先や移動手段も含め、総合的にSDGsを学べるのが理想だ」と語った。

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