【座談会】栃木・那須塩原の魅力~コロナ対策に尽力、安心・安全な体制でおもてなし 

  • 2020年10月28日

温泉、自然、グルメ…心と体を癒して

 知名度の高い塩原、板室の二つの温泉地を抱える栃木県那須塩原市。新型コロナウイルスの影響があったものの、積極的な宿泊キャンペーンの実施で客足は回復の兆しをみせ、「持続可能な観光モデル」で安心・安全な観光地づくりに取り組んでいる。市の観光をリードする4氏にお集まりいただき、観光魅力やコロナ対策など現状と展望を語っていただいた。司会は論説委員の内井高弘。(関谷にある那須塩原市観光局で)

 

 

 ――那須塩原の観光魅力は何でしょう。

 君島 見ていて飽きることのない四季折々の渓谷美と1200年以上の歴史を持つ温泉。渓谷美については紅葉が始まるこれからが見ごろで、色鮮やかな紅葉はどこにも負けないと自負している。温泉については、源泉数は150以上あり、毎分1万リットルの湯が湧出している。10種類ある泉質のうち、実に6種類の泉質がそろい、7色の温泉が堪能できるのはここ塩原だけだ。

 高冷地野菜はみずみずしく、いま「塩原温泉うんまいもんプロジェクト」として、塩原高原大根キャンペーンを実施している。旅館・ホテルでも提供しており、お客さまに好評だ。B級グルメのとて、スープ入り焼きそばなどここでしか味わえないものもたくさんある。日本遺産に認定されている、那須野が原開拓に関わる明治の元勲の建物などの遺産も見応えがある。

塩原温泉観光協会 会長 君島将介氏

 

 荻原 那須塩原は生乳生産本州一で、質の良い乳製品を提供している。黒磯はスポーツがとても盛んで、平地を生かしたサッカー場やテニスコート、野球場など運動施設が充実している。また、自治体が持つ馬場は全国でここだけにしかなく、観光はもちろん、教育面でも活用されている。

 君島会長が触れたように紅葉は市観光の目玉ともいえるが、板室の紅葉は「壮年の紅葉」で、趣が異なる。

 また、板室温泉は国民保養温泉地で、ウィズコロナに適した温泉地だと思う。もともと湯治場であり、長期滞在客が多いが、それを踏まえ、通信環境を整えてワーケーションの場として売り出そうとしている。その他、カヌーや自転車、アクティビティも充実している。

黒磯観光協会 会長 萩原正寿氏

 

 角橋 西那須野観光協会は商工会のメンバーが主要会員で、観光に対する意識は決して高いとはいえない。しかし、観光の重要性は認識しており、観光資源を点と点でつなぎ、回遊性のある観光プランを作ろうと取り組んでいる。

 西那須野地区は那須野が原の西に位置し、東北新幹線やJR宇都宮線、東北自動車道、国道4号などが通り、塩原温泉郷の表玄関といえる。街のあちこちに疏水があり、地区のシンボルともなっている。

 日本遺産の千本松牧場や明治の元勲の建物が主な観光スポットだが、牧場側にある松方別邸は明治36年に建てられた洋風の別荘で、当時の総理大臣・松方正義が建てた。この他、大山別邸や那須野が原公園、オートキャンプ場などがある。

西那須野観光協会 会長 角橋 徹氏

 

 西須 渓谷美や温泉などの自然系、ダム湖カヌーや自転車などアウトドア系など、観光客の多様なニーズに応えられるのが大きな特徴だ。特に温泉については、限られたエリアの中で多彩な泉質が楽しめるのはほかにはない。

 生乳生産本州一という実績を持つが、必然、乳製品の質も良く、国際チーズコンテスト「ワールド・チーズ・アワード2019」で、チーズ工房那須の森の「森のチーズ」が世界10位を受賞した。県産チーズの技術力と味わいが世界で高く評価された。明治から続くワイン造り、米、日本酒もおいしく、グルメファンを満足させる土地柄だ。

那須塩原市観光局 局長 西須紀昭氏

 

 ――日光など、県には有名な観光地が数多くあるが、那須塩原の強み、弱みといえば。

 君島 塩原、板室両温泉の泉質の良さと、豊富な湯量はどこにも負けない。弱みといえば、2次交通かな。整備されているとは言い難い。観光客の利便性を向上させるためにも今後取り組んでいくべき課題の一つだ。

 荻原 板室温泉の、観光地化されていないのが魅力であり、伸びしろは大きいと思う。渓谷美はもちろん、滝も見どころの一つだ。ただ、こうした魅力を存分に生かしているとはいえないので、どうブラッシュアップしていくかが問われている。

 角橋 首都圏からのアクセスが良く、東京からわずか1時間ほどで良質な温泉に入れ、豊かな自然が楽しめること。仙台も近いということを強調しておきたい(笑い)。

 君島 西那須野はまさしく塩原温泉の玄関口で、昔は西那須野駅にバスが50~60台列をなし、観光客を待っていた(笑い)。

 ――新型コロナウイルスの影響で観光業は大きな打撃を受けました。県や市、そして国も観光支援策を打ち出していますね。

 西須 コロナ禍は観光業のみならず飲食業にも影響は及んだ。市の経済にとって大きな痛手だ。観光支援策は非常にありがたいが、「Go Toトラベル」は見切り発車だったためか、現場で混乱してしまった。利益構造からすると負荷ばかり増えている。もう少し制度設計をしっかりして実施してほしかった。

 君島 2月までは影響がなかったが、3月から徐々に出てきた。自粛要請期間だった4~5月は9割減という惨憺(さんたん)たる結果だ。訪日客の足もパタリと止まったが、もともと少なかったので、それほど影響を被らなかったのは幸いだ。

 市のリフレッシュキャンペーンが奏功し、他の観光地よりは回復が早かったと思う。とはいえ、受け入れ人数を制限しているので、宿泊客数はマイナスで推移している。

 荻原 今まで経験したことのない事態だ。コロナ対策で持ち出しも多い。人を集めてはいけない、という本来のサービス業とは真逆の状況下での経営をしなければならないので大変だ。Go Toは局長も指摘したように、現場は非常に混乱し、使い勝手が良くない。支援してくれるのはありがたいが、消費者、事業者が分かりやすい制度にしてほしかった。

 角橋 団体客を対象としている飲食店では大きく売り上げを落としており、今も状況に変わりがないと聞いている。ビジネスホテルの中には宿泊客が9割減というところもある。

 ――ウィズコロナといわれる中、渡辺美知太郎市長は「持続可能な観光モデル」を打ち出し、選ばれる観光地を目指しています。

 西須 コロナ対策に果敢に挑戦してくれている。9月29日には「持続可能な観光モデル」の合意調印式が行われ、塩原、板室両温泉の関係者と共に署名した。

 ――入湯税を引き上げて、PCR検査の財源にするようですね。

 西須 旅館・ホテルの従業員らを対象にPCR検査などのウイルス検査を行う財源とし、市議会も理解してくれた。安心・安全を「見える化」するためで、「きちんと検査しているので安心・安全ですよ」とアピールし、観光客の不安を払しょくする。従業員が陽性となった場合、見舞い金として5万円、事業所に対して協力金として20万円を市が支給する。

 誹謗(ひぼう)中傷を防ぎ、風評被害をなくすため、人権擁護の条例も作ってくれた。那須塩原が安心・安全な観光地になるべく、しっかりと取り組んでいく。

 君島 合意に至るまでは紆余(うよ)曲折もあったが、やらないよりはやった方がいいと判断した。コロナ対策としてこのモデルが全国の模範になればいいと思う。PCR検査は万全ではないが、受けることで「感染してはいけない」という従業員の意識が高まっていることは事実だ。

 荻原 外から人を受け入れる仕事をやっているわれわれが、先陣を切って検査を受けていることに意味がある。コロナ禍は初めての経験。手探り状態の中で、良いといわれることは積極的に取り入れるべきではないか。

 角橋 市や県の対策、情報をしっかりと会員に伝え、いま何をすべきかの手助けをしていく。5月から会員にマスクと消毒液を配布したが、地道な活動を通じて貢献していきたい。

 ――秋冬に向けた集客イベントは。

 西須 塩原高原大根キャンペーンは9月から始まっており、11月23日まで実施する。

 尾崎紅葉や幸田露伴といった文豪の文学碑や滝、吊り橋を巡る「大正浪漫街道散策」では、11月7~23日の期間、塩原文学研究会の会員による文学碑や景観の案内を無料で行う。

 来年1月23日からは塩原温泉街の夜を彩るライトアップイベント「竹取物語」が始まる。約千本の竹灯籠が織りなす光景は幻想的で、ぜひご覧いただきたい。

 君島 初めての試みとして、10月31日から11月23日まで2階建てオープンバスを運行する。オープンバスが走るのは北関東初で、いつもの景色とは違う、眼前で手に取れそうな紅葉を見ていただきたい。また、10月20、21の両日、ウェルネスウォーキングモデルツアーを実施した。ウォーキングを年間を通じての観光素材として磨き上げるのが目的で、座学やオリエンテーションを行った。

 荻原 11月7日、板室温泉を舞台に「ONSEN・ガストロノミーウォーキング」を開催する。栃木県では初めてだ。板室温泉神社、国登録有形文化財の加登屋旅館、木の俣渓谷などの名所と、チーズや地元産野菜を使った料理を楽しんでいただく。交流会、シンポジウムも予定している。

 ――那須塩原が選ばれる観光地になるには、これから何をすべきでしょうか。

 西須 自然とにぎわいが鍵を握っている。自然についてはまだ埋もれている素材がたくさんある。当たり前すぎてつい見落としているケースもあり、それらを発掘していくのが重要だ。

 にぎわいについては、黒磯駅から町の老舗カフェ「CAFE SHOZO」にかけてのエリア一帯が観光まちづくりの参考になるのではないか。こだわりの詰まった店が何軒も集まり、テレビでも紹介された。若者を中心に多くの人が集まる。西那須野エリアでは飲み歩きができる「にしなすバル」というイベントが10月19日から22日まで開催された。

 地域の人々の日常生活を観光客も一緒になって楽しめる旅を提供していきたい。

 君島 コロナ禍で観光の在り方も変わってくるだろうが、いまできることは自然、温泉、グルメを含めて、それぞれの品質をアップさせていくこと。選んでもらえる温泉地、また来たいと思わせる温泉地になるためには、どう品質を上げていくかだ。事業者一人一人が意識しなくてはならない。

 荻原 癒やしの空間づくりだ。観光地化されていないからこそできることがある。心からホッとできる温泉地になるべく、古来からあったものを磨き上げていく。

 角橋 先ほどもいったが、回遊性のある観光プランを作り、提供していくこと。観光と商店街、農産物をうまくリンクさせ、独自のコンテンツを作っていく。

 

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