「一連の周遊旅行の一部としての高速バス」として位置づけられるために、何が必要か。
まずは運行形態。
何度も繰り返すが、現在の高速バスの停留所には特徴がある。大都市側では、過去の運輸行政の流れから、東京発で言えば「中央道方面は新宿(京王が中心)、関越道方面は池袋(西武が中心)」というふうに方面別、事業者別に分かれたターミナルから発車する。
地方側では、パーク&ライド駐車場が併設されたインターチェンジ周辺の停留所を経て、繁華街や官庁街を経て鉄道駅やバスターミナルが終点となる。
だが、大都市側では、空港連絡バスにおいて、郊外発着便が成功しているという実績がある(調布や所沢から羽田、成田空港など)。
これまで、高速バスは「地元の名士」としての地方側バス事業者の販売力により成長してきた。一方、大都市側では、大手私鉄系事業者の販売力は、首都圏全域や関西圏全域といった広域の商圏へはリーチできず限定的であった。
だが、発想を変え、京王の調布発、西武の所沢発のように商圏を自社の鉄道沿線に絞った商品であれば、実は彼らの販売力が極めて有効だったわけである。既に、東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパン、御殿場プレミアム・アウトレットなどへ向かう短距離の高速バスについては、東京や大阪郊外から直行する事例が増えてきた。
この「郊外発で観光地へ直行する高速バス」のいいところは、大手私鉄系バス事業者が取り組むことにより、私鉄グループの沿線での販売力を活用できる点である。
鉄道部門(または親会社)とバス部門(子会社)との関係性の大小により、鉄道の告知媒体(車内吊り広告、駅貼り広告、駅で配布する無料広報誌など)をふんだんに活用できる会社とそうでない会社の濃淡はあるが、後者であっても、私鉄沿線の在住者というターゲットの「顔」が見えている点は大きなアドバンテージと言える。
(高速バスマーケティング研究所代表)