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メディア販売を中心とした「格安バスツアー」市場は、相次いだバス事故を受けて貸し切りバスの運賃制度が変わり、貸し切りバス運賃が再び上昇したことで減速した。
もっとも、バスツアー市場は以前から「団塊の世代」が主要なターゲットであり、彼らはまだまだ元気とはいえ、その次の世代(「ポスト団塊」以降)を取り込めていないことを考えると、いつかは起こる減速であった。
旅行すること自体が目的となり得る「団塊の世代」に比べると、さまざまな消費体験をしてきたより若い層にとって、パッケージツアーは「お仕着せ」に映る。旅行業界では、「消費者の多様化するニーズに対応しなければ」と、掛け声はもう20年くらい聞いているが、貸し切りバス運賃の下落が、結果としてパッケージツアーを延命させてしまった。
近年、富裕層をターゲットとし、有名デザイナーによる超豪華車両を専用に使用する高級バスツアーに、大手旅行会社らが積極的である。ツアーの内容も個性的、本格的なものが多く、関係者の工夫や努力には敬意を表する。しかし、ターゲットが「団塊の世代」である限り、根本的な解決とは、とうてい言えない。
もう一つの新市場であるインバウンドについては、個人観光ビザ発給要件の緩和やリピート率の向上により、FIT化が急速に進展している。クルーズによる訪日客に限っては、ビザの問題もあり瞬間的にかなりの台数の貸し切りバスを必要とするものの、東京―富士山―京都・大阪を駆け足で巡る「ゴールデンルート」のツアーは急減した。
もともと、これら二つの新市場(特に後者)は、低運賃である割には無理な行程が多く(なかには行程表通り走っても、バスの安全運行の法令に違反するような内容のものも含まれていた)、新規参入の零細貸し切りバス事業者が中心となって受注していた。数年前に8割程度の稼働率だったが、現在では1割台という事業者も少なくない。
旅行会社も貸し切りバス事業者も、旅行市場の変化に急ぎ対応する必要がある。
(高速バスマーケティング研究所代表)