このように、(1)旅行業法に基づく主催旅行(現在の呼称では募集型企画旅行)でありながらも、(2)スキー場のリフト券やテーマパーク入場券、立ち寄り観光や宿泊などが含まれるパッケージ旅行ではなく「2地点間の移動のみ」という商品内容で、(3)帰省やスキーといった季節性はなく通年で原則毎日催行(運行)される―という形態の商品が、その後「高速ツアーバス」と呼ばれるようになる。
実は、2002年以前においては、このような商品は国の通達により禁止されていた。
旅行会社と貸し切りバス事業者がタッグを組めば(それどころか、両者を兼業する会社であれば自らの判断で)乗合バスの一種である高速バスに極めて類似した形のサービスを提供できるというのは、改正前の道路運送法の趣旨(地域公共交通の維持を義務付ける代わりに、地域独占的な免許秩序の下でバス事業者を競争から保護)を骨抜きにするリスクがあったからだ。
1986年に運輸省より発出された通達によって、上記3条件がすべて当てはまる商品は道路運送法違反(乗合バスの無免許運行)だとされていた。
だが、02年の同法改正により、同法第1条(「目的」)から「道路運送に関する秩序を確立」という文言が落とされ、代わりに「道路運送の利用者の利益を保護」という言葉が入れられたことで、免許秩序よりも業者間の競争が優先されることとなったため、上記の通達は廃止されたのである。
法的な話が長くなってしまったが、当の本人たちは、このような背景はいっさい認識していなかったはずである。現に、彼らが当該商品を発売したのは01年春。つまり、上記通達廃止前であり、厳密にいうとその時点では違法状態だったのである。
彼らは、純粋に、旅行会社としてニーズに応えて商品を設定したに過ぎない。
大げさに言えば、同じ区間(東京―大阪や東京―名古屋)に、JRバス(旧・国鉄バス)らが既に30年以上も高速乗合バスを運行し続けてきたことさえ、知らなかったかもしれない。
(高速バスマーケティング研究所代表)