【山崎まゆみの「ちょっと よろしいですか」64】澤の屋さんの新しいお客さん 温泉エッセイスト 山崎まゆみ

  • 2021年5月30日

山崎氏

 GWは東京の自宅で過ごしましたので、少し気分を変えて、東京谷中にある澤の屋旅館の主・澤功さんを訪ね、テレワークをしてきました。

 昨年の4月から澤の屋さんは、貸し切り風呂を1組45分・大人500円、子供300円(税込み)で始めました。澤の屋さんのSNSで告知をすると、「澤さんのところ、大変そう」という口コミで、たくさんのお客さんが来るようになったそうです。また貸し切り風呂に来たお客さんから、「部屋が空いているなら、部屋貸しをしたら」とアドバイスをもらい、こちらも始めました。

 午前9時から夜7時まで、1部屋利用できて1人3300円(税込み)。館内はフリーWi―Fi完備。ロビーにはテーブルと椅子があり、ここでも仕事ができ、コーヒーとお茶が無料で飲めます。もちろん貸し切り風呂にも入れるというプランです。

 久しぶりに訪ねると、澤さんがこうおっしゃいました。「部屋貸しも、フロントのテーブルと椅子も、私はテレワーク用にと考えていましたが、最近は主婦のお客さんが『今日は主人が休みなので子供の面倒をみていてくれるので、眠りに来ました』と、お昼前に入り、夕食を作る時間帯まで滞在されたりします。また静かに読書をしたいと、趣味を楽しみに来るお客さんもいます。利用される目的は仕事だけではないんです」。

 澤の屋は観光客だけではなく、コロナ禍でストレスを抱える人に安らぎを与える旅館となっていたのです。

 私も昨年から何度か利用させてもらいましたが、確かに、仕事半分、旅気分半分。むしろ仕事以上にリフレッシュした充足感。何より、緑豊かな庭を眺められる貸し切り風呂の入浴はとてもぜいたくで、コロナ禍の息苦しさから解放されます。

 「売り上げは例年の3割くらい」とおっしゃるものの、澤さんには明るさがあります。 

 それは、やはり澤の屋さんを支えるお客さんたちの存在です。お客さんとの交流がもたらした新たな展開の一例をご紹介します。

 澤の屋に宿泊するお客さんの中に、自分が大切にするぬいぐるみを持参する方がいるそうです。そのお客さんが、愛着あるぬいぐるみとの旅をSNSにアップすると、たちまち情報が拡散し、澤の屋さんに同好の士が宿泊するようになったそうです。

 そのようなSNSでの広がりを見て、ぬいぐるみの旅行代理店「ウナギトラベル」から旅行ツアーを受けてほしいという依頼がありました。自由に旅がしにくいコロナ禍ですので、ぬいぐるみを自分の分身とみなし、ぬいぐるみが楽しく旅をする様子をSNSで見て、愉(たの)しむというツアーです。

 4月に1泊2日で、ぬいぐるみ1体につき4800円。定員は8体でしたが、募集をかけると、なんと3分で完売!

 熊や猿やキツネなどのぬいぐるみがチェックインして、部屋で寛ぎ、谷中の街を散策。添乗員はウナギのぬいぐるみで、ウナギが熊や猿やキツネを案内するというキャッチな写真がリアルタイムにSNSにアップされています。思わずほほ笑んでしまう写真ばかりで、よく見ると、あら(?)澤の屋さんのフロントに獅子のぬいぐるみも登場しているではないですか!

 「本当に楽しそうなので、私もその世界に入りたくなりました。私は獅子舞いをしますので、”しした”という獅子舞風のぬいぐるみを作りました。ツアーの日はお出迎えをしましたよ」と、にこやかに話してくれたのは澤功さんのご子息の澤新さんです。

 近い未来に、またインバウンドのお客さんでにぎわう日本が来るまで、澤の屋さんは元気です。

(温泉エッセイスト)

 
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