【山崎まゆみの「ちょっと よろしいですか」59】女子大生が行きたいと思う温泉地と旅館 温泉エッセイスト 山崎まゆみ


山崎氏

 跡見学園女子大学「温泉と保養」の授業も2020年度で4年目を終えました。例年、履修生は200人前後ですが、コロナ禍に見舞われた今年度も190人ほどが授業を受けてくれました。毎年、履修理由を尋ねますが、「いい温泉や旅館を知りたい」といった実用情報が目的なのが大多数。ただ、中には「旅館で働きたい」「女将さんに憧れる」という今後を期待したい学生さんもいます。

 私としてはどんな理由であれ、温泉に興味を持ってもらえるのは喜びですし、彼女たちは温泉地で働いてくれるかもしれない、そして何より将来の大切なお客さんですから、未来を託す心持ちで講義をしています。

 本年度はコロナまん延ゆえに、オンライン授業でした。対面で授業ができないのは残念でしたが、オンラインだからできる温泉地や旅館からの授業を試みました。福島県土湯温泉や東京都谷中の澤の屋旅館にも多大なるご協力を頂きました。佐賀県嬉野温泉大村屋の北川健太社長、吉川博光さんには嬉野温泉からオンラインで参加していただき、山形県小野川温泉登府屋の遠藤直人社長はご自身のヒストリーや経営学を話して下さいました。

 いま、最終レポート「温泉をデザインする」を採点しています。課題は、私の授業を踏まえて、女子大生が行きたい未来の温泉地や宿を書いてもらうものです。
 コロナを意識した「ワンフロア貸し切り、一棟貸し」プランや、海外旅行にいつ行けるようになるのか不明の状況下で「世界の温泉を体験するテーマパーク」構想は気になります。

 「温泉宿は重たい」「気張らないといけない」「きちんとした完璧な女将さんがいる」という敷居の高い印象が学生さんにはあるため、「気軽に行ける足湯カフェ」「ペットと一緒に泊まれる」「全ての泉質が体験できる温泉テーマパーク」のようなオープンなイメージのアイデアが目立ちました。

 私が評価をしようと思っているのは、癒やし効果があるクラゲが入った水槽を館内の各所に置く「クラゲ温泉」、好みの音楽を自由に聴ける「ミュージック温泉旅館」「話題の化粧品の試供品が使い放題宿」「ゲーム三昧温泉」「Barを基調とした宿」「文学作品を具現化する宿」「病院と温泉のテーマパーク」などです。どれも若い感性ならではの発想で、私も膝を打つものばかり。

 ただ約半数の学生さんがテーマに選んだのが、バリアフリーを基軸にした温泉地や宿づくりでした。「親孝行温泉」というネーミングに引かれた学生さんも多くいました。三世代旅行や家族で楽しめる温泉地を目指し、全館バリアフリーにしながらも、学生さん自身も楽しめるようなカジュアルさも取り入れる宿が理想のようです。

 自分たちが幼少の頃は温泉に行っても退屈だったという思い出から、子供が楽しめるような「遊び」が仕掛けてある宿にするのは面白そう。

 滑りやすいお風呂場には、ニトリの商品をうまく使って、滑らないようにし、視覚障がい者へ配慮するという提案には感心しました。

 またジェンダーを意識して、「全てお風呂は水着着用か、全個室のお風呂にする」と時流を捉えたものもありました。いずれも思いやりにあふれるレポートばかりで、読後に優しい気持ちで満たされました。 

 3月9日に観光庁主催の「ユニバールツーリズム促進事業 オンラインシンポジウム」が開催されます。バリアフリー旅行サポート体制の強化にかかわる実証事業の結果報告、並びにアイドルで車いすユーザーの猪狩ともかさんの講演、私がモデレーターを務める無料オンライントークセッションがあります。思いやりあふれる世の中を実現するためにも、ふるってご参加下さい。

(温泉エッセイスト)

 
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