【山崎まゆみの「ちょっと よろしいですか」50】沖縄県観光バリアフリー政策 温泉エッセイスト 山崎まゆみ


 7月に実施された沖縄県主催の「観光バリアフリーセミナー」を取材してきました。

 沖縄県は平成19年に「観光バリアフリー宣言」をし、「誰もが楽しめる―優しい観光地」を目指して、腰をすえて観光のバリアフリー化に取り組んできました。

 取材したセミナーは初級編。バリアフリー観光のマーケットの大きさ、基本的な接遇の心がけや考え方等のノウハウを学ぶことができます。また中級編、上級編とあり、全てを受けるとさまざまな状態のお客さまの接遇の仕方を学べるようになっています。

 この日の講師は、「NPO法人バリアフリーネットワーク会議」を立ち上げ、その福祉畑で得たスキルを沖縄県の観光に役立てている親川修さん。参加者はホテルや旅行会社、観光地のスタッフの皆さんで、「正しいことを教えてくれるだけでなく、マーケティングの観点からのお話も、とても説得力がありました。お土産物の話は面白かった。中級、上級も受けてみたい」と大好評でした。お土産物の話とは、バリアフリー観光のターゲットとなる高齢者は行ってきたことを周囲に報告するために、旅先ではお土産を多く購入する。そのために、お店に立ち寄った高齢者にはお土産物を買いそびれていないかの注意喚起をするなどの配慮も必要。こうした具体的な例を挙げてユニークに語るセミナーに、私も納得しきりでした。2020年度はLGBT対応、食のアレルギー対策なども含め、計11本のセミナーが実施されます。

 沖縄の観光バリアフリー推進の一つのシンボルになっているのが、那覇空港の国内線旅客ターミナル1階到着ロビーにある「しょうがい者・こうれい者観光案内所」です。

 沖縄県の観光地のバリアフリー情報だけでなく、前もって連絡をしておけば、車いすや電動車いす、ベビーカー、浴場用の車いすや介護用スプーンやビーチ用の車いす「チェアボード」を空港で借りることができます。返却も空港でOK。足が不自由な方のための用品だけでなく、聴覚視覚障害の方にも役立つ用品も多数あるので、まずは事前に相談です。ちなみに沖縄の観光といえばビーチを連想しますが、山も魅力的。北部の国頭村にあるやんばるの森を体験できる「やんばるの学びの森」では、森歩きやバードウォッチングや川遊びなど、各種アウトドアプログラムが多数用意されています。車いすで散策できる全長670メートルの「ヨンナーコース」もあります。また、やんばるくいなを探すツアーは車移動なので、高齢者も参加しやすいです。宿泊施設にはバリアフリールームもあり、夜と朝の食事を頂くレストランのオープンデッキからは、やんばるの森を一望できます。こうして宿にいながらにして森を堪能できるのもバリアフリー観光には大切な要素です。

 もう一つ沖縄県が他県に追随を許さない先進事例があります。それは「逃げるバリアフリー(逃げバリ)」。

 親川さんは「観光に来てもらい、施設に滞在しやすいような『入り口のバリアフリー』はあるのに、災害時に健常者と同じように避難できる『出口のバリアフリー』がないのはおかしい。障害のある方たちを安全に避難させる『逃げるバリアフリー(逃げバリ)』の整備が必要です」と提唱しています。「逃げバリ」を考える際のポイントは、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、アレルギーや難病、知的障害や精神障害、高齢者など、何かしらの障害がある人とのコミュニケーションの術を学び、避難するには何に困難で、それに適した対応とは何なのかを知ることです。

 沖縄県は夜間にも「逃げバリ」の実証実験を行ってきました。自然災害の多い昨今、沖縄県の「逃げバリ」はますます注目されていくでしょう。

(温泉エッセイスト)

 
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