【女将が見た10年とこれから】みやぎおかみ会 阿部憲子会長


みやぎ女将会 阿部憲子会長

立ち止まらないという一念で

 2020年4月、新型コロナウイルス禍での緊急事態宣言発出直後より、予約取り消しで連日事務所に鳴り響いていた電話がある日、ピタリと止みました。ついにキャンセルする予約もなくなった現実を突き付けられ、それでも立ち止まらなかったのは、10年前の東日本大震災を経験したからこそでした。

 あの日津波によって当館は建物の一部が被災しましたが、お客さまやスタッフは皆無事でした。公の避難所ではなく、電気、水、道路が遮断され孤立したものの、衣食住の備えがあるわれわれ宿泊業の役目として、町から避難して来た人々を受け入れました。

 結果的に町の中心部の8割が被災し、多くの人々が町外へ避難・移住しました。2次避難所になる時に「できるだけ子どものいる家庭と経営者の方々を受け入れたい」と申し出ました。

 未来の復興の担い手である子どもたちと、さらに経営者としたのは、工場も会社もほとんど失ったため、人々の働く場の再開が必要だと意識してのことでした。

 震災で基幹産業が打撃を受けた被災地では、「復興」と「交流人口増加」が非常に重要な課題です。わたくしども「みやぎおかみ会」の女将が従事する宿泊業は裾野が広く、多くの産業とつながりを持ち、地域のけん引役を担っています。

 立ち止まってはならない。震災でも、このコロナ禍でもその一念でおります。裾野が広い宿泊業においては影響を受ける業種が多く、また一度休廃業してしまえば再開が難しいことも、震災で目の当たりにしておりました。

 震災後も被災地へ人の流れが止まらなかったのは、そこに現地にしかない魅力があったから。コロナ禍において人々が未来の観光に期待が持てるような企画を、今後もみやぎおかみ会より発案してまいります。

(南三陸ホテル観洋)

 
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