島根県の大田市に行ってきた。石見銀山の町である。2007年に石見銀山遺跡が世界遺産に登録され、脚光を浴びた。観光客は年間80万人を記録したが、現在では20万人前後だと聞く。かなり遠くて、不便である。出雲空港から車だったので、それほどのことではなかったが、過疎地という印象を受けた。が、市長をはじめ役所の人たちや町の人たちは元気、私の方が勇気づけられる感じで、新しい価値観づくりの響きが伝わってきた。
楫野(かじの)弘和市長が、土橋章宏著の『いも殿さま』(角川文庫)を進呈してくれた。石見銀山の歴史を勉強しなさい、という意味があったのか、面白い小説であった。主役の名代官である井戸平左衛門の物語、どれほど石見の人たちが苦労したかを教えてくれる。市長自身が、解説を巻末に記述していた。極め付きの地方、それも過疎地なのだが、全く悲観せず、その環境を逆手に取って大田市を活性化させようと努力されているのだ。その力強い姿勢が魅力となっていた。で、1人の女性実業家を紹介された。
松場登美さんという70歳を超えた白髪の美しい女性、話も若いし身のこなしも若いばかりか、エネルギッシュの塊。こんな女性は、私のよく知る女性ではコシノジュンコさん以外にいない。ただのインテリ女性ではない。「奇跡を起こすまちづくり」の旗手で、令和2年度「ふるさとづくり大賞」で内閣総理大臣賞を受賞された。ふるさとづくりのチャンピオンなのである。
松場さんの業績は、あまりにもありすぎて、本欄で紹介できないほどだ。松場さんの著書『過疎再生』を読む。この人のあふれるバイタリティーに圧倒される。「不便で、遠くて、非効率的。小さな地方だからこそできるブランディングがあります」と説く。
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