【地方再生・創生論 281】心配な「子どもの権利条約」 松浪健四郎

  • 2022年10月23日

松浪氏

 アスリートたちには、「練習」「トレーニング」「稽古」という語がある。「練習」は、反復を繰り返して行い、技を体に覚えさせる。が、その技は、己の身体に合ったアレンジなくして効果的なものとはならない。つまり個性的でなければ、有効な技とはならない。実力者にのし上がった競技者は、その研究力にたけている。

 「トレーニング」とは、身につけた技、技術をより有効にするためにパワー、スピード、スタミナ等の体力強化を図るもの。これも己の身体の特徴を理解し、特に弱点面を強化する必要がある。己の身体特徴をよく知り、個人的に強化せねばならない。これも個性の発揮である。私の場合、上肢が弱かったので、1人で強化のために努力した。

 「稽古」なるものは、英語で訳すのは困難である。日本女性の稽古ごと、茶道、華道、舞踊、料理等も含まれようが、武道の訓練にも「稽古」が用いられる。国語辞典には、「昔の事を手本にし参考にする意味」で、「目的とする物事の技能を高めるために、そのことを師について励むこと」とある。師は、様式、形式、作法を基本として教える。日本の武道には形があり、まず形を学ぶ。個性を発揮するのではなく、個性を隠す、殺すことを学ぶのだ。個性を殺すことを教える訓練は、私の知る限り欧米には存在しない。日本独特の教えで、「武士道」の真骨頂はそこにある。

 産経新聞の8月30日付の記事は、その「武士道」を否定するかのもので、東京・武蔵野市の「子どもの権利条例」を伝えた。かかる条例は、すでに川崎市(神奈川県)をはじめ全国で60を超える自治体で制定されているという。政府が、国連の「子どもの権利条約」に批准したこともあり、各自治体も熱心に子ども支援に取り組む。少子化問題や児童の虐待問題も重なり、子どもについて考えることは大切である。家庭教育として、しつけを行い、社会性を持たせようとするのが一般的であるが、条例が制定されてしまうと自由にわが子を教育できなくなりそうだと心配する。

 産経新聞によれば、子どもには「自分らしく生き、育つ権利」や「自分らしさをとりもどすために休む権利」「自由な時間(余暇)を持つ権利」等を武蔵野市の条例案がうたっているらしい。発展途上国の貧しい子どもたちに対するものであるならともかく、現在の日本では首をひねる内容ではあるまいか。理解に苦しむのは、「休む権利」を与えることだ。家庭教育を無視し、親や家族の思考が入り込めないもので、「個性」だけを重視する。

 子どもが成長するためには、スポーツに限らず、「練習」「トレーニング」「稽古」なくして社会で活躍できる人材を育成するのは困難である。子どもたちの権利ばかりを主張すれば、まともな大人を作れず、おかしな社会になってしまう恐れがある。何よりも学校教育がおかしくならないだろうか。「休む権利」なんて、病人扱いしてどうするというのか教えてほしい。各自治体は、国連の権利条約を十分に分析せず、機運に流されて条例を無理に制定しようとしてはいまいか。

 子ども中心主義はいいが、どこかで身体や精神を鍛える必要がある。人間だけが他の動物と違って「教育」を受けさせねばならない。子どもの権利を振りかざし、その教育を異なる方向に導かねばいいが、と心配する。条例がなかったため、自治体や各家庭が困ったというのだろうか。むしろ、一部の団体の声に踊らされてはいまいか。親や家族には、きちんと子育てをする責任がある。その責任のほかに条例を守らねばならないのは納得しがたい。子どもたちに、条例によって自由を与えすぎるのは反対だ。「稽古」の大切さを学ぶべし。

 近年、国も自治体も子どもたちに干渉しすぎる感じがする。少子化問題をすり替えることなく、養育のための環境整備で十分ではなかろうか。教育委員会の存在の陰は薄く、一部の議員に振り回されている印象を受ける。人権問題とリンクする条例制定については、慎重であらねばならない。

 
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