【地方再生・創生論 272】情報のバリアフリー化 松浪健四郎

  • 2022年8月13日

松浪氏

 日体大が私立大として、国内で初めてとなる高等支援学校を網走市に開校して早いもので6年がたつ。「全ての人たちにスポーツを!」楽しんでもらう目的からスタートを切った。どの大学も付属高校を設置するが、支援学校は持たない。その理由は、採算がとれないからだと決めつけてよい。

 全国の公立の支援学校が増大するばかりで、教員不足も表面化している。支援学校教員免許がなければ、それらの学校の教壇に立てないルールになっているが、日体大はその免許を出す数少ない私大だ。網走の付属支援学校で教育実習ができるように工夫し、宿舎も校内に設けた。必ず共生社会が重視される世の中になると、私たちは将来を読んだのだ。

 しかし、支援学校の設置は、想像以上に費用がかさむ。私立大が手を出さない理由の第一は、やはり建設費が高くつく点も見逃せない。「バリアフリー化」こそ重視され、一般の校舎とは異なる。私どもの学校は、知的障害者に特化しているが、それでもバリアフリーが大切だと考えた。校内のポスターや掲示物にしても、ルビを打つなり易しい漢字を使うようにも努めている。指導に当たる先生方の人数も普通の学校よりも多いため、人件費もかさむ。網走市、北海道庁も補助してくれているが、やっと国も援助の方向にある。

 2022年5月、「障害者情報アクセシビリティー・コミュニケーション施策推進法」が施行された。超党派の議員による議員立法として成立した法律だが、先進国としては当然あるべき法である。障害者に情報が知らされなければ、火災、地震、津波、洪水等の災害が生じた際、多数の被災者が出るに違いない。それらを防止するための法律で、東日本大震災や各地の河川の氾濫等による教訓から必要性を感じて成立した法だ。欧米では、IT機器をはじめ他の機器でも、障害者の使用を考慮して製品化させている。障害者にも一刻も早く情報が伝達できるようにしているのだ。

 この法律は、「アクセシビリティー」(各種サービスの利用しやすさ)をうたうもので、国や自治体には義務や罰則がない。しかし、障害者にも便利な機器の提供および開発を促進させるための起爆剤となり得るものである。常に公共団体は、障害者の存在を頭に入れて政策を練り、物品を準備せよということだ。共生社会を考える上で大切な指針でもある。外国人旅行者や在住者のために、外国語の表示が増加してきたが、障害者の存在も忘れてはならない。

 日体大の高等支援学校は、「スポーツ教育」「労作教育」「情操教育」を三本柱に据える特色を持ち、そのための環境が十分に整備されている。社会へ巣立った際、活躍できるように訓練するに加え、個人の個性と能力を伸長できる設備も整えている。どんな社会でも、障害者が健常者と同様の活躍ができ情報を入手することができなければ、健全な社会とはいえない。この法律が、障害者が情報面においても不利益を被ることのないように、政府や自治体は財政面でも必要な措置を講じる必要がある。

 障害者の種類も多岐にわたる。そのために情報バリアフリー化するに当たり、さまざまな工夫が求められる。私どもの支援学校は知的障害者だけの利便性を考えるだけでよいにつけ、全ての障害者に同じ情報が同時に入手できるようにせねばならない。この基本理念に基づいて、国や地方自治体の責務がある。障害に合ったさまざまな方法で、緊急通報できるように、その手段を考えておかねばならない。

 テレビやラジオの放送にも工夫が求められる。字幕も手話も大切だし、テレビのテロップの読み上げも必要だ。他の障害者に対しても情報を伝えるために、各自治体で研究してほしい。罰則や義務がないとはいえ、各自治体の障害者への対応が問われている。障害者が情報を入手し安心して暮らせる自治体こそが、やさしい自治体であろう。私たちも支援学校経営に苦しんではいるが、やさしい日体大の旗のもと、共生社会の創造に取り組む。

 
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