【地方再生・創生論 259】「公務員の学会」が必要だ 松浪健四郎


松浪氏

 ある講演会で感動した。講師の話が卓越していて引き込まれ、睡魔の衝撃にも負けなかった。私もよく講演を依頼されるが、自慢できるような名手ではない。やはり、人の話をよく聴き、参考になる知識を己のものにする必要がある。いろんな職業によって、さまざまな組織があって意見交換し、仕事の幅を広げる。今も私は大学教員時代からの学会に入っている。学問分野の流れを知っておきたいからである。全国知事会議もあれば、市長会議や議長会議もある。意見交換の大切な場だ。

 が、実際、自治体の現場で仕事をする職員たちは、マニュアルにない案件が生じた場合、右往左往するしかない。よその自治体は、どのように問題処理をしているのだろうか。こんな疑問に応えてくれる場が欲しい。

 とりわけ、コロナウイルスによって行政の初めての仕事が増加した。前例がないのだから、いかに進めるべきか思案にくれる問題が増えるばかりだ。各自治体との横のつながりがないと困る。それで、公務員たちのウェブ会議やチャットといった、インターネットの活用が人気だという。いわば、意見交換の場であろう。

 病院に行けば、医師の学会出張のための休診の多いのに気づく。学会に出席して、新しい知識や技術を学ぶ。または発表して研究成果を普及させる。医師や学者、研究者たちは学会という組織を用いて自身を向上させる。インターネットの対話ツールによって、自治体の枠を越えて諸問題の意見交換をせねばならないほど、新しい事象が襲ってくる。上司も困るが、他の自治体の意見が参考になる。

 災害、防災、医療等は現場を支える公務員たちによって政策として進められるが、昨今、今まで経験したことのない問題が頻繁に起こる。各自治体職員によるウェブ会議システム「Zoom」を用いて意見交換することが大切である。既に公務員有志によって、この種の会議が開催されていると読売新聞が報じていたが、これは自治体職員の学会のようなものだと私は解する。3人寄れば文殊の知恵、意見交換が大切であるばかりか、公共に資する重要性を持つ。

 一般的には通常業務を終えてからの開催がほとんどらしいが、自治体の幹部は、この種の会議に着目して、正式に堂々とした公務の公議に格上げすることを考えるべきだ。

 多くの人たちとメッセージの交換ができるチャットを公用パソコンに導入する自治体も増えたという(読売新聞)。どの自治体も近年の自然災害やコロナ禍で困り果てている。問題意識を共有できれば、自治体職員は心強いに違いない。公務員の学会だと決めつけ、大切な会議であると位置付けてほしいと願う。

 IT企業によっては、情報量が多いので、チャットアプリの導入をする自治体が増加傾向にある。これらは公務員にとっては有難い助っ人、住民のために役立つ。諸問題は地域によって異なるにつけ、テレワークや職場での会議では参考になる。私たちが研究者であった当時、同志が全国にいると知ると孤立感を持たず、助け合うことができたと述懐する。自治体職員を勇気付ける一方策が、自治体間のネット会議でもあろう。意見や情報の交換が、現場の最前線にいる職員を救うのだ。

 世の中の変化、住民の意識変化、想定外の出来事、私たちの頭が混乱するばかりである。エネルギー問題をはじめ、各自治体にまで種々の問題が押し寄せてきた。自治体間で協議したり、参考にしたり、協力したりせねばならない時代に突入しているが、デジタル化の進展もあり、簡単に全国自治体の様子、現状を知ることができるようになった。自治体幹部の器量が試されていて、自治体間のネット会議を盛んにするよう努めてほしい。

 日本の医学、学術の発展は、種々の学会によって進歩した。その人しか持たない職人の知識や技術ではなく、公共のための情報、知識を生かすためにデジタル時代にふさわしく、各自治体は取り組み、職員に自信を与えるべし。

 
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