【地方再生・創生論 223】「少子化対策プロジェクト」立ち上げを 松浪健四郎


松浪氏

 私事にわたり恐縮するが、一人息子夫婦に子どもがいない。また、一人娘は未婚で大学院で研究中、結婚する気配がない。つまり私たち夫婦には孫がいないのだ。

 だから寂しいと言っているのではない。少子化の典型的な見本だと思っているのである。私の周囲にも同様に子どもを持たない、孫を持たない人たちが多くいる。あの子だくさんの時代が懐かしい。

 私たち大学経営者、学校経営者にとって少子化問題は最大の心配事である。特に私立学校にあっては、少子化は死活問題といえる。保育園や幼稚園にとっては、3年4年後の問題で経営と直結しているのだ。私どもも幼稚園を経営しているが、両親をはじめ家族が送り迎えができない子の入園を認めていない。殿様商法的な経営と思われようが、東京世田谷区の高級住宅街にある幼稚園としては、常識的な入園資格となっている。園児の安全を第1としてきたからである。

 が、バスで送迎する園児が多数を占める時代がやってきた。遠くからも園児を募集せねばならないからだ。少子化の波は確実に到来していて、夫婦共稼ぎが一般化している。政府や各自治体が、ほとんど少子化に手を打たず夫婦も子どもを持とうとしなくなっている。欧米の大学では、学生結婚は自然現象として捉え、そのための寮や保育園までキャンパス内に設置していた。結婚観は日本とは大きく異なる。

 このコロナ禍で出生者数が大幅に減少した。2020年は約86万人、2021年はさらに減少するという。研究機関の予測よりも10年以上早く少子化が進行しているのだ。地方の自治体によっては、出産祝金を出したりして子づくりを奨励してはいるが、もはや追いつかない。コロナ感染症は、出生数減少を加速させ、日本の将来に赤信号を灯す。

 そればかりか、わが娘のごとく結婚をしない男女の増加も見逃すことができない。結婚祝金を出す自治体も散見できるが、焼け石に水という感じがする。コロナ禍は、結婚や子どもを持つ余裕を失わせ、若者が慎重になっている。景気の悪化による収入減、勤務先の業績悪化等によってブレーキがかかるらしい。

 厚労省の人口動態調査では、2021年は出生者数は75万人まで落ち込む可能性があるという。この数字は、2039年と予測されていたのにもかかわらず、実に18年も早い計算になる。一度減少した出生者数は、そう簡単に回復しないだろうから、真の少子化に私たちは直面することになる。その危機感は、私たち学校経営者には強くあるが、自治体はコロナ禍やワクチンを心配するばかりで、少子化に対する危機感に声をあげないのはどうしてか。

 早速、各自治体は「少子化対策プロジェクト」を立ち上げ、戦略を練る必要がある。高齢者ばかりの自治体では夢がない上に、移住してくる若者たちも増加しない。空き家ばかりが増え、活力のない自治体を作ってはならないゆえ、「子づくり作戦」に取り組む必要があるのだ。経済が縮小するだけではなく、自治体から「若さ」が消失してしまう。

 「結婚祝金」「出産費用自治体負担」「出産祝金」「保育園費用自治体負担」「幼稚園費用自治体負担」等、若い夫婦を支援する政策が考えられようが、その予算をどこから捻出して転用するかが各自治体に問われる。高齢者への支出を減らしてでも「子づくり作戦」を優先しないことには、自治体の未来がない。大胆な思い切った政策が求められているのだ。

 すでに国民の3人に1人が高齢者である日本、そのための支出は健康保険を見るまでもなく大きい。老人を取るか、子どもを取るかの二者択一の状況下に追い込まれていて、普通の政治では自治体の発展は望めない。「子づくり作戦」の研究に本腰を入れてほしい。

 われわれは衰退の道へ進みつつある。少子化が、その第1の原因だ。人口増加も大切だが、子ども増加のための知恵を出す自治体の出現が求められる。もう手遅れになってはいるが、諦めずに新政策を投入すべきだ。

 
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