【地方再生・創生論 219】途上国の汚水処理に多くの自治体が貢献 松浪健四郎

  • 2021年7月2日

松浪氏

 1964年の東京オリンピック前、ハエを追放するためにトイレの水洗化が進んだ。政府は補助金を出して上下水道の整備も進む。発展途上国から先進国への仲間入りの1丁目1番地は、悪臭の追放、ハエの追放、安全な水の供給であった。地下水をくみ上げることによって、地盤が沈下する社会問題も露呈した。

 水の問題は、どの自治体にあっても重要であり、水源を求めるためにダムを造り、給水池の整備に走った。人々は、井戸水を重宝してきたが、急速に上下水道が整備された。わが国の経済成長のスピードと比例して、各家庭の先進化、欧米化が進む。私たちは、毎晩、風呂に水を入れるために井戸から水をくむのが日課だった。が、今日では栓を回すだけ。

 日本の上下水道技術は世界的にも優れていて、発展途上国支援(ODA)のために活用されてきた。私が3年間も暮らしたアフガニスタンの首都カブール市の水道は、日本政府の援助によって敷設された。砂漠の国のオアシスに、飲める水(日本人では硬水のために下痢をする)が供給されるようになったのだから、日本の評判は高かった。国際協力事業団(現在の国際協力機構・JICA)は、水道技術者を世界中の発展途上国に派遣してきた歴史を誇る。特にアジア、アフリカが多い。

 近年、JICAだけでは要請に応じられないため、途上国における下水道・汚水処理分野の取り組みでは、多くの自治体もJICAと協働しているのだ。1自治体が、複数の国を対象に取り組んでいる場合もあり、その事業数は30以上に及ぶ(「mundi」2020年6月号)という。9都道府県と12市の自治体が途上国の汚水処理、衛生的なトイレ造りに貢献していることは、あまり知られていない。

 新潟、兵庫、島根、広島、静岡、千葉、埼玉、滋賀の各県と東京都をはじめ、名古屋市、神戸市、北九州市、福岡市、八女市、水俣市、大阪市、京都市、甲府市、横浜市、川崎市、仙台市等がJICAと民間企業と連携しながら貢献している。ただ、これらの貢献が、国民や住民に届いていないのではないかと心配する。国際貢献は、公衆衛生と水質保全の問題という人々の健康生活と直結しているだけに喜ばれている。地域住民の税と技術が、途上国の人々のためにも使われている現実、もっとアピールしていいのではないだろうか。

 2015年9月、国連総会で採択された持続可能な開発目標(SDGs)には、17の目標があり、各目標には30年までに達成すべきことが定められている。JICAは、水と衛生に関する目標として「すべての人に水と衛生へのアクセスと持続可能な管理を確保する」とあることから積極的に協力しようとしている。健康で文化的な生活を持続するには、健全な水循環をつくり、維持することが求められているからである。JICAの支援策は多岐にわたるが、水と衛生面においても多大な貢献をしているが、さらに各自治体の協力も必要としていることを私たちは理解すべきである。

 安全な水とトイレのためには、汚水対策が重要である。排水を下水管に流して、河川の下流で汚水処理をする下水道整備が必要となる。これらの技術やノウハウは、各自治体が経験を通じて持っている。この方法、対策を途上国のために役立てる自治体を増やしたいものである。そして、その国々との交流を盛んにし、国際性を高めるべきであろう。

 さらにJICAは、途上国の下水道インフラを持つ国を対象に、技術者や関係者を研修のために招いている。仙台市建設局が協力し、災害リスク管理等を指導した実績を持つ。国内外での技術協力や支援を推進して、自治体の存在感を高めてほしいと思う。仙台市は、東日本大震災の経験を国際協力のために生かしている。自治体はJICAと連携して、さまざまな面で協力・支援の輪を広げるべきである。

 わが国の先進技術や事例は、発展途上国の人々のためにも活用しつつ、外交力を高める必要がある。地方自治体も国際貢献することに着目、実行する時代なのである。

 
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