【地方再生・創生論 211】戦死者の遺骨収容を一日も早く 日体大理事長 松浪健四郎

  • 2021年4月29日

 ここ数年、東京・九段ライオンズクラブの新年会に招かれ、卓話をする。その前に全員で靖国神社に参拝する。私にとっては初詣で、心を洗いながら平和を祈念してさまざまな願いごとをする。九段ライオンズクラブの地元でもある関係で、クラブは神社に多様な貢献をしている。

 私は1946年の生まれ、戦後の人間だ。小学生の頃、父親を戦争で失った上級生の数人が、靖国神社に参拝するというプログラムがあった。毎年、上京する上級生をうらやましく思ったが、戦死された父親と対面するための行事だったのだ。どの家族にも親族を含めて戦争の犠牲者のいない一族はなかった。第2次大戦の犠牲者は310万人だが、悲しいことに76年前の話となると風化してしまった感じがする。

 8月15日の終戦記念日には、国をはじめ各自治体も戦没者追悼式を開催する。代議士時代には招待を受けたので出席させていただいたが、さすがに高齢者ばかりの式典となり、参加者数も減少の一途をたどる。孫たちは平和な時代しか知らないばかりか、戦死した祖父の顔も知らないため、追悼式に興味を示さない。もはや日本国民の若者たちは、戦争についての意識を失せていると私たちは心配する。

 昨年末、大みそかの毎日新聞の1面トップ記事は、「海の戦没遺骨収容」という政府方針を伝える内容だった。撃沈された艦船の乗員など、今も海底にある遺骨を収容するというのだ。2016年に成立した「戦没者遺骨収集推進法」により、遺骨収容が国の責務となったため、厚生労働省は海没遺骨についても収容するために本格的に取り組むというのだ。実に海外の海に30万体もの日本兵が眠っているのである。

 私の友人である米津等史氏(元衆議院議員)は、政界を引退後、戦没者の遺骨収容をライフワークにしている。純然たるボランティア活動で、立法される以前から中部太平洋の島々に行き、遺骨収容という戦後と戦っている。私は幾度も米津氏から日本政府の遺骨を放置してきた無策ぶりについて知識を得てきた。米国の遺骨収容の取り組みに比して、日本政府は戦死者に対してどれほど冷たいかを学んだ。完全に戦争はおろか、戦死者までも私たちは風化させてしまっている。

 第2次世界大戦の日本兵の海外戦没者は約240万人とされる。1952年から政府は遺骨の収容を主権回復後に始めたが、あまりにも戦域が広大であり、膨大な遺骨が残っているため、それほど熱心に取り組まずにいた。それは、遺族たちが生活するのに必死で、支給される遺族年金等に遠慮してか、「遺骨を戻してほしい」と声を出す人たちが多くいなかったからであろう。遺骨なき墓に花を供える虚しさ、この非人道主義に私たちは諦めるしかないのだろうか。この問題も風化させてはならず、遺族たちと共に各自治体も声をあげてほしい。遺骨収容は「国の責務」であるのだから。

 シベリアに抑留された日本兵は、約57万5千人で奴隷的強制労働を極寒の地で、満足な食料も休養も与えられずに強いられていたのだ。この悲劇は、想像しただけでも心が凍てつく。で、約5万8千人が命を落としたのである。氏名の判明しているのは約4万、遺骨収容もそれほど進んでいないのが現状である。

 遺骨が外国人なのか日本人なのか、それとも動物なのか、科学の進展で分別できるようになってきた。米国の技術力には及ばずとも、一日も早く先進国として戦死者の遺骨を収容すべきだ。各自治体は、戦没者の名簿を保持している。遺骨の有無調査は、それほど困難ではないはずだ。遺伝子によって遺骨の遺族を容易に判明するともいう。英霊を一刻も早く遺族の手に戻す作業を本格化させるべきだ。

 日本遺族会(水落敏栄会長)の人たちも高齢化している。が、サイパン島をはじめ、あちこちの島で野ざらしになっている遺骨も多くあると米津氏が悲しむ。身元が判明せずとも、せめて千鳥ヶ淵戦没者墓苑で眠れるようにしてあげてほしい。各自治体は、地元の犠牲者のためにも声をあげて、国を動かす必要がある。

 
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