
和心亭 豊月
芦ノ湖を見下ろす標高800メートルの高台、箱根神社の東隣に位置する温泉旅館「和心亭豊月(わしんていほうげつ)」は、全15室の小規模高級施設。創業70年を迎える老舗旅館の一つで、リピーター率は4割を超える。そのため、顧客データの管理には特に力を入れている。
「素晴らしい時間をお過ごしいただくためには、お客さま情報の蓄積、伝達が重要」。専務取締役の杉山慎吾氏はこう強調する。情報の蓄積、分析にはオラクルのクラウドサービスやトリップラボのBI(ビジネスインテリジェンス)ツールを活用。データを可視化し、マーケティングに結び付けてきた。
次のステップは、スタッフへの効率的な情報伝達、リアルタイムな情報共有の仕組みの構築だ。3年前から数社のグループウエアを試用し、検討を重ねたが、「どれも一長一短があり、決め手に欠けていた」(杉山専務)という。個人向けのSNS・情報伝達アプリのLINEとは別に、従業員間で使える法人向けの「LINE WORKS(ラインワークス)」が展開されていることは知っていたが、個人向けツールの印象が強すぎて、選択肢には入っていなかった。
ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で状況が一変。同館も自粛休館を検討する段階に入った。スタッフが一堂に会せなくなるという危機感の中で、「特に若いスタッフを中心に皆が使い慣れているLINEのようなものなら、今すぐに始められる」とラインワークスの導入を3月の中旬に急きょ決めた。
全スタッフ20人が各自のスマホに専用アプリをインストール。携帯の電話番号で登録(ログイン認証)することで、即時に運用を開始することができた。個人向けLINEとの違いは、管理画面でメンバー管理ができること。またトーク(チャット)だけでなく一斉周知に便利な掲示板機能を備える。杉山専務がスタッフ向け掲示板で最初に行った投稿は「緊急事態宣言を受けて4月下旬(当時)まで宿を休館にします」だった。
運用はPCからもスマホからもできるが、「会社からのお知らせ」など入力文字数や写真の多い伝達事項は杉山専務が主にPCから発信。スタッフはそれを自分のスマホで確認し、コメントをつける。部署ごとのトークルームでは、アフターコロナを見据えた、熱い意見交換が繰り広げられているようだ。
「ラインワークスを導入したことで、休館中もスタッフ同士が『つながり』を実感し、コミュニケーションが途切れることなく続いている。一体感は、導入前よりも高まっているかもしれない」(杉山専務)。営業再開後は、接客現場での情報伝達、共有に欠かせないツールとなりそうだ。
ラインワークスの利用料金は、機能やデータ容量により1ユーザー当たり月額0円から千円(年間契約の場合)。問い合わせは、ラインワークスのホームページhttps://bit.ly/2ASpvj0から。
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