【口福のおすそわけ 460】ガチ中華!~西川口編 その1~ 竹内美樹


 前号で花椒(ホアジャオ)について書いていたら、ムチャクチャ四川料理が食べたくなってしまった。そんな矢先、以前本稿でご紹介した、コリアンタウンを案内して下さった友人夫妻から、ガチ中華にお誘いいただいた。

 そもそも「ガチ中華」って?と思っているアナタ。ガチとは「ガチンコ」の略で、真剣勝負という意味。日本人向けにアレンジしていないガチな中国料理を提供する店を、最近はやりの大衆的な「町中華」に引っ掛けて、「ガチ中華」と呼ぶようになったといわれている。

 だから、ガチ中華とされる店の運営は、オーナーや調理人、ホール係に至るまで、全て中国語圏の人々で成り立っており、客もまたほとんど中国人で、店内は中国語が飛び交う。店によっては中国語のメニューしかない場合も。つまり、中国人の中国人による中国人のための飲食店なのだが、イマドキ日本人の間でもブレイクしている。

 それは、コロナ禍のせい。中国に進出する企業の増加に伴い、出張や駐在で現地の味を知る日本人は増えた。だが、コロナ禍でなかなか海外に出られないと、時折あの現地の味が無性に食べたくなるそうだ。友人夫妻はまさにその口。中国からの輸入を手掛け、しょっちゅう現地に飛んでいたのにそれがかなわず、国内でガチ中華の店を探し、訪ね歩いていたのだ。

 麻辣(マーラー)ブームで、日本人がガチな味を受け入れる素地ができていたことも大きい。そしてその料理は、唐辛子で真っ赤に染まっていたりして、SNS映えするモノが多い。さらに、日本語が通じない店に行けば、日本にいながらにして海外旅行気分も味わえる。

 ガチ中華のもう一つの魅力は、食材だ。中国人の食に対する貪欲さは、4本足のモノはテーブルと椅子以外全て食べるとやゆされるほどだ。筆者もかつて、熊の手やラクダのコブ、サソリの唐揚げなどを食したことがあるが、ガチ中華では、われわれ日本人があまり常食しない珍しい食材を、現地の味付けで頂ける。

 池袋、高田馬場、新大久保、上野、小岩など、近年ガチ中華が集まっているエリアの中から今回ご案内下さったのは、埼玉県川口市西川口。現在、外国人居住者数が全国1位という同市。西川口駅周辺を歩いてみると、あちこちで外国語が飛び交っている。

 目的の店は「安老爺炭火蛙鍋」。その名の通りカエル鍋専門店だ。今中国では、若者の間でカエル鍋が大流行しているとか。えぇっ?!と思われるかもしれないけど、各地でカエルを食した筆者、鶏肉みたいでプリプリして美味だと思う。同店のもう一つの楽しみは、ザリガニ♪ 北欧で食して以来だ。

 同店は中国のカエル鍋チェーン店で、2019年に西川口で開業し、現在は上野にも支店がある。名物鍋は中央に炭火の入った筒があり、それをぐるりと囲むような円形の鍋をセットする仕組みで1~4段まである。段数も中味も選べる、日本人の味覚に日和らないこの鍋、果たしてどんなモノだったのか? 次号に続く!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒