【口福のおすそわけ 452】卵クライシス‼ 竹内美樹


 今、食品の値上げラッシュが止まらない。帝国データバンクによれば、3月に値上げされる食品は3442品目にのぼり、今年に入ってからの累計では1万5000品目を超えたという。お弁当の製造販売に携わっている筆者、中でも業務用食用油の値上げ率のすさまじさに、驚くばかりだ。

 急激な円安に伴い、燃料価格など製造コストや包材価格、物流費などが上昇したことが主な要因とされるが、それだけではない。実は、ロシアによるウクライナ侵攻が大きく影響しているそうだ。ウクライナは、ヒマワリ油の輸出量世界一として知られるが、菜種油の生産量も多い。だが、黒海に面する輸出拠点の港湾都市がロシア軍によって封鎖され、輸出量が大幅に減ってしまったのだ。

 世界を襲う異常気象も、引き金の一つ。近年米国やカナダを襲った干ばつの影響で、油の原料となる菜種や大豆、トウモロコシが減産、需給ひっ迫につながった。また、新型コロナウイルス感染拡大による経済危機も、暗い影を落とす。

 いろいろな要素が重なって、「令和の食用オイルショック」とでも言えるような様相を呈している食用油市場。だが、より危機的状況に陥っている食材がある。卵だ。価格が高騰しているだけでなく、モノが無い。

 鶏卵相場が掲載されている「JA全農たまご」のサイトをのぞいてみた。現在東京でMサイズの平均卸売価格は、1キロ当たり340円。ちなみにコロナ前、2020年1月上旬は160円。高騰というよりむしろ暴騰だ。

 ナゼそんなことに? 食用油の価格高騰同様、トウモロコシなど飼料価格や光熱費、包材価格などさまざまな費用の上昇が影響しているのだが、最も大きな原因は鳥インフルエンザ。農林水産省によると、今年3月6日時点で約1570万羽が殺処分されたそうだ。感染が確認された養鶏場では、鶏舎の洗浄や消毒などにおよそ3カ月を要し、再出発後もヒナが卵を産めるようになるまで約8カ月かかるため、元に戻るには1年以上要することになる。

 影響の大きさは計り知れない。大手コンビニでは「ハムとたまごのサンド」のハムを増量してゆで卵を減らす措置が取られ、ファミレスでもハンバーグなどの目玉焼きのトッピングを休止。マヨネーズも卵が原料だから、来月から大幅値上げとなるそうだ。

 実は、わが社でも卵騒動が。通常大量調理施設では、サルモネラ菌の汚染を避けるため、殻付き卵でなく液卵を使用することが多い。だが、液卵で半熟煮卵は作れない。「映え」を狙ってメニューに加えるため、調理済み商品を仕入れていたが、休売になってしまったのだ。あぁ~残念!

 海外では生卵を食べられないから、日本でTKGを食し、そのおいしさに感激した外国人の需要で輸出量が増えているのも、国内の卵不足につながっているとか。でも、しっかり衛生管理された卵はニッポンの宝だ。国内外を問わず皆が口福な卵料理を愉たのしめる日が、早く来ますように。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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