【口福のおすそわけ 443】お箸いろいろ 竹内美樹

  • 2023年1月14日

竹内氏

 お正月に使う、白木の「祝箸」について。お祝いの席で箸が折れると縁起が悪いので、素材は折れにくく丈夫な柳だ。春一番に芽吹く生命力の強さにあやかるという意味も。薬用効果から、長寿をもたらすとされ、縁起担ぎで「家内喜」とも書く。箸の中央が膨らんだ形から、米俵に見立て「俵箸」という呼び名で五穀豊穣の象徴とされ、子孫繁栄を願う「はらみ箸」とも呼ばれる。長さは縁起の良い数字といわれる末広がりの八にちなみ、八寸(約24センチ)と決まっている。

 祝箸でいただくおせち料理は、節句に神様にお供えする「御節供」が由来。それをお下がりとして食し、神様の力を頂く「神人共食」という観念から、両先端が細い「両口箸」なのだ。一方は神様が使い、もう一方は人が使うというワケ。

 祝箸は決まりがあるので皆似ているが、同様に木地に塗りを施さない「割り箸」は素材も形もいろいろ。江戸時代に生まれ、当時は竹製だったが、明治10年ごろ、杉の産地奈良県吉野郡で、廃材を使って杉の割り箸を作るようになったそう。

 最初に登場したのは「丁六箸」で、頭部の断面が四角く割れ目に溝もない。江戸時代に広く出回った「丁六銀貨」のように、多くの人に使ってもらいたいとの願いがその名に込められているという。ちょうど六寸(約18センチ)という意味もあり、他の箸に比べて短い。

 その角を丸く削り、持ちやすくしたのが明治20年ごろ生まれた「小判箸」だ。頭部の断面が小判型に見えることからその名が付いた。それを割りやすくするため溝を付けたのが、明治30年ごろに誕生した「元禄箸」。江戸時代中期、幕府が財政難のため金の含有量を減らして作った「元禄小判」のごとく、木を削って量を減らしたのがその名の由来。

 明治末期になると、割り箸はおもてなしの意味を持つ進化を遂げる。それが「利久箸」だ。由来となった千利休は、客人をもてなすとき自ら杉の木を削って箸を作ったといわれ、削りたての香りを楽しんでもらおうと箸の両端を削ったとされる。商人たちが「休む」という字を使うのを嫌い、商売が永久に続くようにと願いを込め、「久」の字を使うようになったそうだ。

 大正時代には、頭部を斜めにカットした「天削箸」が登場。削ぎ落とされた部分は木目の美しさが強調されるので、目でも楽しんでもらいたいという心遣いから生まれたそうだ。

 割り箸は森林破壊の元凶というのは誤解だ。国産の割り箸は、間伐材や建築用材の端材などで作られるため、むしろ健全な森林づくりに役立ち、エコなのだ。また、未使用と分かるので、衛生面でも安心である。

 手食は世界の約4割、カトラリー食も箸食も約3割ずつだが、汁物も全て箸のみで食べるのは日本人だけ。考えてみれば、お食い初めで祝箸を使ってから、お骨を箸で拾ってもらうまで、われわれの人生は箸と共にある。口福なひと時も、箸無しではあり得ない。どれだけお世話になっているか! お箸さん、ありがとう♪

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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