【口福のおすそわけ 441】蟹かにワールド その17 モズクガニ丼 竹内美樹

  • 2022年12月26日

竹内氏

 かつては、秋深くなる頃、大好物の上海蟹(がに)を食べによく産地まで出掛けていた。上海から車で約1時間半、陽澄湖畔の町「巴城」だ。だが残念なことに2016年、上海蟹ダイオキシン汚染問題が勃発。以降、現地を訪ねる機会を逸していた。

 ご存じの方も多いと思うが、上海蟹こと「チュウゴクモクズガニ」は繁殖力が強く、生態系に影響を及ぼす懸念があるため、日本では特定外来生物に指定されている。国の許可がないと、生体の輸入、譲渡や運搬、保管、飼育も禁じられている。先月、都内の中華食材販売店が、販売目的で194匹の生体を保管したとして摘発され、ちょっとした話題になった。けっこう荒稼ぎしていた模様。中華料理店で姿蒸しを食せば、1杯4、5千円はする。人気高級食材なだけに、違反者が後を絶たないようだ。

 最近、上海蟹の良いニュースを聞かないなぁと感じていた矢先、その存在を忘れちゃイカンよとばかりに現れた蟹が! この蟹シリーズで前回ご紹介した「ヒラツメガニ」をゲットした鮮魚店で、今度はバケツの中を勢い良く動き回っている蟹を発見! 「モクズガニ」と書かれた札を見ると、何と1匹500円!

 その名の通り、チュウゴクモクズガニと似た近縁種で、小笠原を除く日本全国に生息する。河川に住む親蟹が、秋から冬に産卵のために海に下り、海域で繁殖を行う降河回遊型だ。

 漢字で「藻屑蟹」と書くが、はさみに生えた毛が藻のように見えるのが名前の由来。地域によって呼び名は異なり、ツガニ、カワガニ、ヤマタロウガニなどとも呼ばれ、古くから郷土料理として食されてきた。高知県の「ツガニ汁」、大分県の「がん汁」、東北地方の「ガニ汁」は、いずれも生の蟹を丸ごと細かくすりつぶして濾(こ)した汁を煮立てた物。タンパク質が固まって、蟹のうま味が詰まったフワフワの物体になるそうだ。

 さて、鮮魚店で出会ったモクズガニ。甲幅5~8センチ程度で、見た目は上海蟹そっくり! コレをゲットした筆者、戦闘モードに入る。無料の氷をたくさん入れて持ち帰ったので、家に着く頃にはおとなしくなっていたが、油断は禁物。まだいつ暴れ出すか分からない。

 それに、生け蟹をいきなり熱湯に入れると自切して脚が取れてしまうことが多いので、ビニール袋に入れたまま、改めて氷水を足して氷締めに。でも何だか生き返りそうで怖いので、水からゆでずに沸かしたお湯にぶち込む。20分くらいで、真っ赤なゆで蟹に!

 冷蔵庫で寝かせた方が良いと言う人もいるが、せっかくならゆでたてをと、アチっと言いながら甲羅を外せば、こぼれんばかりの蟹ミソと内子が顔を出す。ミソの濃厚さ、内子のホクホクした食感がたまらん♪

 国産天然物は食品衛生上も安心で、激安なのに上海蟹に勝るとも劣らぬおいしさ。ニッポンの自然の恵みと生命をいただく有難さに感謝しつつ、日本酒をチビリ。やっぱり上海蟹と同じ味だなぁ…と、紹興酒をグビリ。口福な夜となった。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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