【口福のおすそわけ 424】再び。しあわせをはさむ 竹内美樹

  • 2022年8月20日

竹内氏

 先頃、テレビ番組「カンブリア宮殿」に、「サンドイッチハウス メルヘン」の原田純子社長が出演された。スタジオでのインタビューの他、密着取材のVTRも放映された。筆者も5年前、本紙に「しあわせをはさむ」と題し同社と原田社長について書かせていただいた。その口福について述べた拙稿と違って、同番組では、1982年の創業以来40年間1度も赤字を出していないという、同社長の経営手腕に焦点を当てていた。

 「メルヘン」は、昨今はやりのフルーツサンドの元祖として名高い。デパ地下や駅ナカに27店舗を構え、サンドイッチは全て店内厨房で手作り。卵をゆで、生クリームをホイップし、通常なら出来合いの物を使うところを、一から作っているのだから恐れ入る。

 成功のヒミツはいくつかある。まず一つは、お客さまを喜ばせるために、徹底的においしさを追求していることだ。作りたてはモチロンのこと、サンドイッチの要となるパン作りにも妥協はない。オリジナルオーダーのパンは、「パンとしておいしい小麦粉」を使わず、あえて味わいを主張しない粉を特注しているそうだ。また、生地は普通30度弱の温室で4時間程度熟成させるところ、冷温で18時間も寝かせるという。粉が十分に水を吸い込むことで、綿菓子のようにふわふわで口溶けの良い食感に仕上がるのだ。

 二つ目の秘密は、商品開発力。ショーケースには常時30~40種類が並び、ついアレコレ選びたくなってしまう。季節物を含め、年間約300種類ものメニューがあるという。フルーツサンドの果物は、社長自ら全国各地に赴き厳選。また、社長が好む「ご飯に合うおかず」もラインアップに登場する。「梅肉入り蓮根と鶏肉のサンド」などがそうだ。密着VTRには、新商品を試食後、「メルヘン本来の後味の良さがない」とNGを出す社長の姿が。品質へのこだわりがうかがえる。

 三つ目は、モットーの「のんき経営」。楽しく働ける職場を目指し、営業を置かず、売り上げを追わず、店舗の拡大も抑えている。商業施設から出店依頼が絶えないが、この10年店舗数はほぼ変わらず、1軒出店すると、1軒退店を考えるという。実は駅ナカ「エキュート東京」に出店した際、1日約120万円を売り上げるほど大ブレークしたが、多忙のあまり従業員が疲弊し、接客時の笑顔が消え、手の掛からない商品を優先させるようになってしまった。お客さまのためという気持ちを失ってはいけない。手の届く範囲で確かな商品を作りたい。「のんき経営」とは、無理のない店舗数で、準備を万端にし、先手を打つという意味。のんきにやるための努力も必要だと、原田社長は言う。

 コロナ禍で、先述の店舗が1日2万円の最低売り上げを記録しても、郊外店が売り上げを伸ばし、全体で3割増になったというからスゴイ。従業員から母親のようだと慕われる原田社長の優しさが伝わる味わいは、これからも人々をシアワセにしてくれるだろう。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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