【口福のおすそわけ 419】バスマティ米 竹内美樹


竹内氏

 ガパオライスやグリーンカレー、シンガポール・チキンライスなど、エスニックなご飯物が好きなわが家。いずれもジャスミン米が必要不可欠なので、常備している。普段は筆者が役員を務めるお弁当製造販売会社の契約農家さんの、ミルキークイーンという品種を食しているが、時折、玄米や雑穀米もいただくし、パエリア用にバレンシア米を購入することも。

 その上、仕事柄、夏ごろから各地の新米も試食するので、時期によって在庫が増えてしまう。お米は鮮度が命。精米したてが一番おいしいから、あんまり種類を増やすのもなぁ…と思っていたが、とうとうガマンできず、もう1種類メンバーに加えることに。スパイスカレーや、世界三大炊き込みご飯のビリヤニに欠かせない、バスマティ米だ。

 ご承知の通り、われわれ日本人が食べているお米は、短粒種のジャポニカ米。だが、世界的に見れば、長粒種のインディカ米の方が、はるかに生産量が多く、全体の約8割に及ぶといわれる。ジャスミン米もバスマティ米も、インディカ米の中でも「香り米」と呼ばれる高級品種とされている。え?じゃあ、どこが違うの?

 まずは産地。ジャスミン米はタイやカンボジア、バスマティ米はインドやパキスタンで栽培されている。そしてその香りは、双方ともアセチルピロリンという成分によるもの。前者は甘いポップコーンのような香りでややフローラル系、後者はもう少し強いナッツのような香りだ。前者は芳香成分が数カ月で消えてしまうため、新米が好まれるが、後者は熟成させた方が、香りが良くなるとされる。ヒンディー語で「バス」は香りを、「マティ」がたくさんを意味するという。インドでもわずか1%しか作られておらず、「香りの女王」「お米のシャンパン」と呼ばれているそうだ。

 形状もやや異なる。バスマティ米の方がずっと細長い。炊くとより長く伸びる性質があり、ジャスミン米よりパラパラしている。デンプンの成分アミロース含有量が高いので、粘りが少ないのだ。ちなみに、モチモチ食感の糯米(もちごめ)は、アミロースが含まれていない。

 アミロースの多いインディカ種は、ジャポニカ種のおおよそ1・4倍消化吸収に時間が掛かるらしい。だから食後血糖値の上昇スピードも遅く、太りにくいといわれる低GI食品である。

 そんなバスマティ米は、「湯取り法」で炊く。軽く洗って水に浸けた後、お湯でゆで、ザルで水気を切ってもう一度鍋に戻し、ふたをして蒸らすのだ。炊飯器の調理法は「炊き干し法」と呼ばれ、米の量に適した水を入れ、その水分を全て吸収させる。炊飯中に溶出したデンプン、つまり「おねば」も米にまとわせるから、粘りと甘味が増す。だが、ゆで汁を全て捨ててしまえば、おねばも付かないので、パラッとした食感になる。

 もっちりしたニッポンの銀シャリもイイけど、パラパラ系のご飯も大好き♪ おいしい上に低GIって、超うれしい! だからって、食べ過ぎちゃダメだけどネ。

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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