【口福のおすそわけ 391】鍋を育てる 竹内美樹

  • 2021年11月19日

竹内氏

 前号で、数年前に購入した鉄製の中華鍋についてチラッと触れた。実はこの鍋、プロの料理人に絶大な人気を誇る「山田工業所」というメーカーの物。普通の中華鍋は、プレス機で押し出す一発成型で大量生産しているが、同社は1枚の鉄板を叩いて鍋の形にする「打ち出し製法」の、国内唯一のメーカーである。

 一つの鍋を作るのに、数千回も叩いて成型するため、鉄が締まって強化され、薄く軽く仕上げられるそうだ。鉄の分子が細かくなるから熱伝導も良くなり、叩いて表面に細かい凹凸ができるので、油なじみも良くなるという。だが、大きなハンマーが付いた機械を動かし、職人が一つ一つ手作業で仕上げるのだから大量生産はできず、価格は数千円台とはいえ、プレス製品の倍くらいはする。それでも当時、鉄の中華鍋が欲しくていろいろ調べているうち、どうしてもコレじゃなきゃ!とガマンできなくなりネットで購入した。

 片手の北京鍋か、両手の広東鍋かの選択肢については、鉄の中華鍋でチャーハンを作ってみたいという願望から迷わず北京鍋を選んだ。通常取っ手は溶接されているが、同社の鍋は一体型だからグラつく心配がない。でも、ムチャクチャ熱くなりそうだからと、木の柄がついたタイプにした。問題は大きさだったが、わが家は人数が多いので33センチを選択。だが、1210グラムもあるので、中身をたくさん入れてしまうと、重くて片手で鍋を振るのは難しい。

 この鍋をいまだ使いこなせていないと前号で白状したが、重量感とお手入れの煩わしさがハードルを上げている。鉄鍋って結構手の掛かるヤツなのだ。

 まず、購入してもスグには使えない。新品の鍋にはさび止めの薬剤が塗ってあるので、それを焼き切らないといけないのだ。煙をもうもうと出しながらの「焼き」作業が終わると、間髪を入れずに「油ならし」をせねばならぬ。多めの油で野菜クズを炒めるのだ。そしてお湯で洗ってコンロの火でしっかり乾かし、薄く油を塗って終了。これでやっと使えるようになる。

 洗った後いちいちコンロの火で乾かすのも、33センチ1キロ以上ある鍋に油を塗るのも、やっぱり少し面倒だ。でも、コレは使うたびに必要なお手入れ。購入当時は一生懸命やっていたが、この作業が残っていると思うと酔っぱらってもいられないし…なんて考えちゃうから、ついつい鉄鍋の使用頻度が減ってしまった。

 だが、それじゃあ宝の持ち腐れだ。鉄鍋は、手を掛ければ掛けただけ使いやすくなるようで、これを「育てる」と言うらしい。諦めちゃあ女が廃る。よぉ~し、もう一度育ててみよう!

 何事も形から入るタイプの筆者、モチベーションアップのために目を付けたのが、穴の開いた中華鍋みたいな「炸鏈(ジャーレン)」。中華料理は調理工程に油通しを多用するが、コレがあると超便利なのだ。というワケで、わが家にまた山田工業所の炸鏈が仲間入り。コイツの焼きと油ならしをしたら、鍋と一緒に育てるぞ!

 ※宿泊料飲施設ジャーナリスト。数多くの取材経験を生かし、旅館・ホテル、レストランのプロデュースやメニュー開発、ホスピタリティ研修なども手掛ける。

 
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