【体験型観光が日本を変える49】人間と日本をより高みに 藤澤安良


 季節外れの台風21号が各地に大雨、洪水、大雪など甚大な被害をもたらして日本列島を駆け抜けた10月22日は、衆議院議員選挙の投票日だった。その結果は自民党が改選前と同数となり、希望の党は設立当初の期待を担えず、政権の対立軸とその受け皿として急きょ立ち上げた立憲民主党が善戦した。実力ある無所属は当選した。不祥事や言動不適切な候補者の何人かは落選することとなった。

 若手も、女性も少なく、世襲議員が多く、当選者の年齢が総じて高いように思える。若者の政治不信や無関心が候補者の年齢にまでも影響しているのであろう。平成の終わりは来年であろうが、あまり変化のない何年かが続くことになる。通り過ぎた台風の後片付けや整理が始まるが、選挙戦後の国会での勢力図も変わり、こちらも整理整頓が必要となり、何らかの動きがあるはずである。

 株価は上がり続けているが、選挙結果が出たので落ち着くに違いない。米軍ヘリが不時着炎上したかと思えば、選挙戦の最中に自衛隊機が墜落したり、戦闘機が炎上したりとあまりにも事故が続き過ぎている。国民の生命と財産を守ると言いながら、最先端で働く自衛隊員の命が損なわれるのは不本意なことである。

 一方、民間では、日本の基幹産業であった鉄鋼や自動車産業に不祥事が相次いでいる。鉄鋼では品質検査データーの偽装、自動車では無資格者による検査。航空機や列車などの材料にも影響を及ぼし、車は人間の命に直結して、いずれも安全、安心が著しく損なわれる結果となり、一流ブランドに大きな傷をつけた。米軍や自衛隊の事故も、企業の不祥事も、なぜそうなったのか、その原因の究明と対策がはっきりしなければ、事故や不祥事は繰り返されることになる。国民の不安は募るばかりである。

 今日は書類を提出するために、ある公的機関を訪れた。窓口の対応は気分を害さないようにと配慮しているようだが、言うことが国民の視点や暮らしや思いに立っていない。マニュアルのような手引き書に掲載されている事柄は、すべてのケースには当てはまらず、無理矢理当てはめようにも、それらが想定されていない不備な物だった。その組織にいると、その手引き書を変えようとはせず、当てはまらないことを排除しようとする残念な人間の集まりであった。

 他の人間の尊厳を考えなくなりつつある。自分や自社のことばかりが大切で、他人や国民のことまでは思いがまわらない。日本の企業や公的機関の組織は誰が何を教育しているのか疑問が渦巻く。もはや、講義スタイルの研修では、ノウハウや手法は学べても、それを駆使する人間力や心の教育はできていないことが歴然としている。体験交流教育は、体験者に感動を与え、信念体系を揺り動かし、豊かな心を育み、総合的な人間力や人間関係構築力、あるいはチームビルディングや創造力、問題解決力、さらには安全対策、危機管理、法令遵守の意識向上にも極めて有効である。人間と日本をより高みに。

 
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