【体験型観光が日本を変える304】あらゆる体験から養う非認知能力 藤澤安良


 ゴールデンウイーク(GW)が終わると同時に、5月8日から新型コロナの感染症分類が「2類」相当から「5類」になった。とはいえ、8日に何かが起こったわけでも、感染者がなくなったわけでもない。大量に訪問者が増えるであろうG7サミットを見据えてのイメージ戦略であろう。

 多くの外国人が訪日して、日本人全てがマスクをしている姿を見ると感染がまん延しているかのような印象を与えかねない。

 3月13日からマスク着用が任意になったにも関わらず、律儀で真面目で用心深い日本人のほとんどが、公共交通機関の中ではマスクを着用している。しかし、スポーツ観戦や飲み会では声も出ているし、マスク姿が少なくなってきている。

 徐々にではあるが、コロナ前に戻りつつあり、観光も修学旅行も体験交流を主体とする体験アクティビティや農山漁村での教育民泊も戻りつつある。受け入れ地域はその流れに乗り遅れることなく世情に合った対策を講じながら、受け入れ態勢整備を行わなければならない。

 コロナ禍での課題の一つに、人間関係構築機会が減少したことがある。その関連からか、児童生徒のいじめ、不登校、自殺、そして家庭の問題ではあるが虐待が増加した。さらには、所得の格差は子どもの体験格差にまで及んでいる。

 その現象は、児童生徒の学力以外の物事に対する考え方、取り組み姿勢、行動力など、日常生活や社会活動において重要な影響を及ぼす能力、すなわち、コミュニケーション能力、意欲、自制心、やりぬく力、自己肯定感などの非認知能力である。

 その能力はあらゆる体験から養われるといわれている。そのことは、私は30年前に理解していたからこそ、その普及を生業としてきた。しかし、ここにきてあらゆる研究者などがデータ的に証明し、論じ始めている。

 体験格差は非認知能力格差となり、学歴や所得格差となっている。お稽古事や習い事、野球、サッカー、水泳などスポーツスクール、加えて家族旅行は住んでいる社会や自然の違いを学ぶ機会となる。いずれも学費以外の費用が必要になる。貧困が負のスパイラルの原因となる。しかし、多額のお金がかからない旅先での自然とのふれあいや、思い切っての田舎暮らしも勧めたい。また、日常の放課後の過ごし方にもある。

 室内でのテレビゲームや塾通いばかりでは、仲間とのコミュニケーション機会も、社会や自然と触れ合う機会も少ないことになる。その延長線上に引きこもりが生まれる。15~39歳の引きこもりは54万人、40~64歳の引きこもりは61万人で、合わせて約115万人になる。

 引きこもりの原因や様相は多彩で、生物学的、心理的、社会的な要因が混在している。引きこもりの期間は7年以上が半数を占め、男性が7割以上を占めている。労働力不足に悩む日本の労働力がこれほどにも失われていることは国家の大損失である。

 学校教育でも、家庭でも、観光産業でもあらゆる体験ができる社会基盤の整備が不可欠である。国家としても課題解決に動くべき時である。

 
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