
東京では観測史上タイの早さでソメイヨシノの開花宣言があった。地球温暖化の影響があるのかと思える。多くの食料品が秋に続いて再値上げされるものも出てきている。インフラや生活関連費、あるいは公共交通機関の運賃までも値上げの春を迎えた。
それに合わせて、総じて日本の給与は上がっておらず、実質賃金の低下が続き、生活が困窮するといった人も少なくない。その背景もあってか、このところ、全国各地で強盗殺人や強盗傷害事件が多発している。
春闘では、満額回答した大企業もあるが中小ではどこまでのベースアップが可能か注目される。桜は咲き、生活の花も咲いてほしいものである。
旅行業界での大手は2021年のコロナ禍に資本金を数十億円から1億円に減資した。税制上の中小企業となった。もちろんそれだけで経営改善されるわけでもない。それには、政府の各種窓口業務の委託により収益をつないできたが、本業である旅行業の回復が不可欠である。
本業を動かすにしても、リストラや転職が続出したコロナ禍から人材不足は深刻である。マルチタスクを進めても、視点を変えなければ未来は開けない。今までの、格安、お買い得、食べ放題、詰め放題、冷凍食品、出来合いの惣菜、輸入食材、業務用食材、人件費削減、タブレット化、薄利量販からの脱却が急務である。
さらには、航空・鉄道・高速バス・宿泊・飲食と、ほとんどの旅の要素がネットで予約購入できる時代になり、旅行業の存在意義は減少した。人間がプロデュースし精神文化としての旅づくりを目指さなければならない。そして、高付加価値商品と高収益化を図らねばならない。
求められる旅のキーワードは「人に会い人に学ぶ旅」「自然の中で自然と暮らす旅」「食生産現場で旬と鮮度を味わう旅」「日本人の伝統の技と匠を伝える旅」「日本の田舎を守り後世につなぐ旅」など、日本の社会や地球規模の課題とつながるSDGsやサステナブルツーリズムが求められており、方向転換を図る時が来ている。
営業利益が出ないことで、経費節減の矢面に立つのが人材育成教育費である。いずれの会社も販売員やご用聞き営業マンレベルで終わっており、コロナ後を見据えた時代の要求に応えられる人材がほとんどいない。
収益構造改革や新しいビジネスモデルの開発で、人間の知恵と発想が生かされる高付加価値商品造成を可能にする旅のプロデューサーが必要になる。これは旅行業界のみならず、日本のあらゆる企業に共通の課題である。また、その人材育成は研修室ではなく、地方の大自然や農林水産業等の体験プログラムで実施されるべきである。
その人材育成プログラムこそが収益構造を変革する新しい旅行商品となる。受け入れ側の地域でも、新しい時代の旅のニーズに対応すべく、SDGsやサスティナブルツーリズム、地産地消の食材提供システムなどに対応する地域やDMO組織が必要になる。コロナ禍からコロナ後への生き残り戦略は「高価値への大変革」である。