【体験型観光が日本を変える284】補助金に頼らない方策を 藤澤安良


 サッカーのW杯カタール大会が開幕した。日本は強豪ドイツに勝利したが格下のコスタリカに負けた。そんな番狂わせも多く、その勝敗に一喜一憂し、現地はサポーターなどの観客等で大きく盛り上がっている。

 日本国内との大きな違いは、カタールでは誰もマスクをしていないことにある。現地からはサッカーの情報は届くが、新型コロナの状況と感染防止策等の報道は全くない。まるで新型コロナはなかったかのような様相である。

 一方で、日本国内は、新型コロナやインフルエンザの感染者も増え続けている。

 全国旅行支援により、国内旅行もインバウンドも町の飲食店も人流が戻りつつあり、特に紅葉の真っ盛りの京都はコロナ前に近づくような人出でにぎわっている。混雑を緩和しようと、早朝からの開門や夜間のライトアップなど工夫がなされている。そんな中での第8波は、物価高にあっても動きだした経済活動に水を差すことになる。

 今、感染者数の割合が多い北海道の道東に来ている。札幌などの都市部に比べて絶対数は少なくても、感染者の特定が容易な地方では、イベントの中止や集まりの自粛は続いている。つまりは、地方経済は、引き続き厳しい状況下にある。

 全国旅行支援は12月27日宿泊分まで延長し、年明けの2023年については、割引率と割引上限額、クーポン券付与額を引き下げ、実施する方向で開始日などが検討されている。需要喚起策として国家で巨費を投じて行う政策ゆえに効果は当然なくてはならない。

 一方で宿泊施設は、この制度がないときよりも宿泊料金が高くなっている宿も少なくない。当然物価高の影響はあるにしても、補助があり、お客の負担が減ることを良いことに、便乗値上げと取られても仕方がない。そのような状態が続けば、23年からの補助率を下げた場合の顧客に対するメリットが少なくなるのではと危惧している。

 さらに、宿から観光クーポンを渡しても使用できる施設がほとんどないなど、大きな課題である。地方に行って地元の飲食店の加盟率が極めて低く、コンビニで弁当ばかりでは、望む旅の姿ではない。

 全国旅行支援の在り方も、宿泊と体験や観光、飲食や物販も全てに関係しており、地域で、それらの関係者が一丸となって真剣に議論し、申請が難しければ行政や商工会、観光協会等が手助けし、システム構築に向かって動いてほしい。そんなこともできなければ観光振興も地域振興もできない。

 さらには、補助金はいつまでも続かず、金の切れ目がお客の切れ目にならぬよう、コロナ後を見据えて、補助金に頼らずとも誘客ができる方策を考えなければならない。

 著名観光地でない田舎でも、秋の京都の混雑とは比べものにならない静寂があり、絶景のスポットも地方には数多ある。価値観の多様化は言うまでもない。食料生産現場の新鮮食材、大自然の景観、体験プログラムなど、地域の魅力を再発見し、アピールし、地方の停滞を打破するときである。人が知らないところへ行く動きが始まる。

 
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