【体験型観光が日本を変える 90】人間性が問われる観光産業 体験教育企画社長 藤澤安良


 テニスの全米オープン女子シングルスで、男女通じて日本史上初の四大大会制覇を成し遂げた大坂なおみ選手が帰国した。常勝のセリーナ・ウィリアムズに圧勝したテニスの強さはもちろん、インタビューの場面での日本人的な謙虚さと飾らず隠さない受け答えが好感度を高めている。ファッションセンスも評価が高く、彼女の魅力に対して連日多くのマスコミが大々的に報道、世界中で大フィーバーを巻き起こしている。

 昨今の日本人は忖度(そんたく)したり、都合の良いことだけしか言わなかったり、盛ったり誇張したり、その上、偉そうであったりする光景を数多く見てきたせいもあり、実に清々しく微笑ましくもある光景だった。スポーツで強くても人間性が好まれなければ、いい目標にも憧れにもならない。

 観光産業も人次第であり、人間性が問われることになる。体験型観光では主人公である体験者に対しインストラクターは援助者であり指導者である。プログラムや商品といえるようになるには、インストラクターやガイドの存在が不可欠である。能動的なスタンスがあり、それらの「技術や知識」を伝える場合の旅人との人間関係構築能力が望まれる。

 商品は素材そのものの差よりも、むしろ企画、演出、コーディネート、インストラクターなど、関わる人の差と言っても過言ではない。それらの人々の志や熱意が勝負である。しかしながら、生まれながらにインストラクターは存在しない。養成の場が必要になる。体験者とインストラクター間での交流から体験を通して信頼関係が生まれ、人間関係構築の場になる。

 ボランティア精神は尊いが、地域活性(精神的・経済的)しなければ地域振興にはつながらず自己満足の世界にとどまる。訪問者の知的欲求を満たし交流が促進されてこそ地域の深い理解と心の高まりになり、顧客満足度を高め、リピーターにつながる。少なくとも、インストラクターやガイド料の収受は不可欠であり、地域の店や物販とも連携しなければならない。また、ガイド料を支払ってくれるようなクオリティにしなければならない。ガイド収入が生業といかずとも、副収入となり他の地域を学ぶなど、自己研さんに励まなければ飽きられてしまう。完成形はない。日々進化し続けなければならない。

 過日、体験型観光を目指す高知県でインストラクターの研修を行った。高知県の西部の大月町では、柏島や観音岩を望む断崖絶壁があり、絶景だがあまり知られていない。青い花のブルースターで有名な芸西村は、坂本龍馬の妻であるお龍さんが暮らしていたところのお龍ロードは当時の面影をしのばせている。

 黒潮町ではガラス製の瓶に花や植物を見栄えよく配置し、シリコンオイルなどで満たした「ハーバリウム」なるものを作った。食べてしかわからない味と同様に、行かないと見えないし、歩いてみないとわからない。やってみてしかわからない魅力と奥の深さを感じることになる。体験型観光が必要な理由でもある。

 
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