【体験型観光が日本を変える 74】体験教育プログラムが必用 藤澤安良


 新潟県で少女が殺害された上に線路上に遺棄され、電車にはねられるという残忍極まりない事件が起こり、容疑者の若者が逮捕された。真相の究明は先になるとしても、ごく普通に生きてきた人が、突然狂ったかのような分別のない行動に疑念が残る。

 アメリカンフットボールの試合中に、無防備な選手に意味のないタックルをする姿が映像でとらえられていた。誰もがありえないと思われる行動に非難が集まっている。人と直接接するスポーツだけにルール違反は、死亡事故や体が不随になる事故が起きるとも限らず、許されるものではない。10日間たっても責任の所在が明確にならず、原因究明や再発防止にほど遠い現状は情けない限りである。有名な大学での出来事だけに国民の関心も高い。しっかりとした対応が求められている。

 相撲協会の横綱が廃業するという不祥事も、国会での論争が続いている学校建設にまつわる疑念も、セクハラの問題も、真実は一つであるはずが、言い分が食い違うことばかり。スポーツマンシップはどこへ行ったのか。国民の代表のはずの議員や国政の中枢にいる官僚には良識があってほしい。

 心が病んでいると思わずにはいられない。次回オリンピック開催地として恥じることのない国になる必要がある。学歴はあっても、キーボードは叩けても、体験値や遊びが少なく、自然との関わりや交流も少なく、人間関係構築能力の不足は否めない今日の企業や組織にとって、仕事の技術やスキル以前に人間力を養う人材育成の教育の場が求められている。

 会議室、研修室での研修プログラムでは人間力向上までには及ばず、教育効果の高い体験教育プログラムの必要性が高まっている。学校教育に体験活動が重要視されているゆえんでもある。実態を嘆き、あきらめている組織は少なくないが、この効果、効能を証明し、広く社会に認知されるべきである。また、その教育は豊かな自然や農林漁業の現場であり、田舎や地方を活用することからも、地域振興に大きく貢献することとなる。

 また、誰もが食事をするが、その食材の生産現場で、どんな労働によって、どんな生産の経過をたどっているのか、実態を知る人はわずかである。スーパーで野菜を運搬する人も、飲食店で働いて直接食材に触れている人も、どこの誰がどのような思いや苦労があって生産しているのか、理解している人も限られる。食料生産現場の価値と未来を見据えた活動が必要な時代である。

 CO2排出量が多い都会の人が生きていけるのも、CO2を吸収し酸素を排出する森林などの植物のおかげである。その豊かな森林を守るのも田舎の役割であるが、人口減少に歯止めが利かない。農林漁業とともに森林保護は、地球的かつ国家的な課題として認識しなければならない。その機会が、体験教育プログラムによる教育研修に他ならない。人成らずして、国家の未来なし。

 
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