【体験型観光が日本を変える 69】日本人に感動と学びを 藤澤安良


 冬の寒さで休眠打破が起こり、例年より早く桜の花が散り始めた4月8日、南信州では季節が逆戻りしたかのように思わぬ雪が舞った。桜吹雪と本当の吹雪との共演という珍しい光景を見ることとなった。例年実施している「桜守の旅」は伊那谷の名桜を桜守のガイドが案内する旅であり、標高の高い地域が見頃を迎えている。全国各地の自治体では桜祭りを予定されていたが、葉桜祭りになったところも少なくない。今年は寒暖の差が極端である。

 極端と思う出来事も起こった。大相撲の地方巡業中に、土俵上で倒れた人を救助するために土俵に上がった勇気ある女性に対して、「女性は土俵から降りてください」とのアナウンスが再三あったことや、現場の責任者である巡業部長の当事者意識のない言動も問題となっている。人命より優先されるべきものはないはずである。女人禁制はその後にあるものであり、神に気遣いをするなら、そんな了見の狭い神はいないはずである。そのしきたりを否定するのではない。マニュアルや杓子定規ではなく、臨機応変に対応できるのが人間でもある。

 防衛省の報告書の存在がなかったり、あったりした。報道によると、指示命令、伝達連絡などがうまくいかなかったとのことであった。政府でも防衛省でもそんな情報の伝達の不手際が原因だとすれば、有事の時に間違いが起こりはしないかと心配になる。

 鹿児島県内で近親者が5人も殺害されるという事件が起こった。動機や原因は捜査を待つとして、人を殺めることが起こってはいけない。人間の命の尊厳が軽んじられている。

 コンピューターや人工知能の発展の勢いはすごいが、人間の「人間力」が低下し、責任逃れをしているのではないかと思う出来事が起こり続けている。人間力は、机上の学問や書き物ではなく、人との交流コミュニケーションや自らの体験から育まれるものである。児童生徒はもちろん大人もそんな機会が極めて少ない時代となっている。

 訪日外国人も見て回るだけの観光から、日本の文化や自然を深く理解する体験交流へシフトしている。海外でも体験プログラムが定番化し、さらに需要が拡大している。

 つまりは、日本人の体験型観光が遅れている。国内でのあらゆる体験プログラムに参加してほしいものである。それは上っ面で簡単に楽で短時間でできるようなものであってはならない。ほんものの体験にはほんものの感動と学びがあり、心身も、技も、調理力も、体験者を鍛えて高めてくれる。十分な時間をとって、都会の喧噪から離れる。豊かな自然や田舎における農林漁業体験やアウトドア・アクティビティ、あるいは伝統工芸や味覚の体験などは、とても心豊かでぜいたくな時間を提供することになる。

 完成した人間などいるはずもなく、生涯高まり続けることが良い人生であると思っている。体験交流の発展は、地方の活性化と日本の真の豊かさにつながっている。

 
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