【体験型観光が日本を変える 105】国際交流のモデル事業 体験教育企画社長 藤澤安良


 日本人横綱・稀勢の里が引退した。横綱としての期待に応えられなかったが、「土俵人生に一片の悔いはなし」と会見で述べた。連敗や8場所連続の休場の原因がけがであっただけに残念であったに違いない。稀勢の里の土俵に限らず、力士としても、人としての立ち居振る舞いも立派であったという印象がある。心技体のそろった日本人横綱を育ててほしいものである。

 隣国の韓国とは徴用工問題に続いて、レーダー照射問題で外交的には微妙な関係にあっても訪日客は増え続けており、昨年の訪日外国人が全体で3119万人となり、目標とされた3千万人を超えた。

 地方の人口減少に拍車がかかる中、地方創生へ都市に集中している訪日客を地方に呼び込む流れを作ることが求められている。そんな中、外国人留学生が岩手県三陸海岸の震災被災地の田野畑村と普代村で、大津波被災地視察と田舎暮らし体験や民家でのホームステイを行った。

 三陸海岸へは全員が初めてであり、被災地の当時の被害状況から復興の道筋と防災に対する関心は高い。中国の内陸部や台湾でも大地震が起こっており、スリランカやミャンマーの学生は、インドネシアの地震による大津波で甚大な被害があったため、「過去の経験や今回の津波がどのように防災に生かされたのか」など質問も多く、他人事ではないという意識で、氷点下の現地で約3時間にわたって大津波体験者からの体験談話に聞き入っていた。

 日程には農家でのシイタケ採りや、サッパ船といわれる漁船に乗ってのワカメ収穫、焼きシイタケやワカメをしゃぶしゃぶにして食べる昼食があった。参加者は、ほとんどの食をコンビニに頼っていると前置きしながら「自分で食材を採るところからやったので、格別おいしい」。タラの三平汁は、「白身が淡白でおいしい」と日本の若者でもなかなか聞けない言葉だった。その後、それぞれの家庭に向かいホームステイを行った。

 (1)国際交流コミュニケーションから、互いの人間関係を深める(2)共同調理により田舎料理(和食)の作り方を習得する(3)田舎の生活文化を体験し、日本を深く理解する―などの目的は達成され、目頭を熱くする感動のお別れがあった。体験現場や食事メニュー、美しい自然景観など、取材した内容を、全ての学生が携帯しているスマホで母国や仲間に情報発信することから、その拡散力にも期待できる。

 受け入れる地元も、元気をもらい、郷土への自信と誇りを持つことにつながりいいことづくめであるが、(1)民家ステイの受け入れ家庭の確保(2)体験プログラムとそのインストラクター養成(3)コーディネート組織、が必要になる。

 その仕組みこそが地方創生、田舎での交流人口拡大、訪日外国人の地方への誘導、地産地消化による地元1次産業と経済の活性化につながることになる。外交問題はいろいろあっても、国民レベルでの国際交流は活発になるが、そのモデルになる事業である。

 
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