【令和時代における交通インフラの人材採用49】観光産業を支えるバス 女性バス運転手協会代表理事 中嶋美恵


 以前、バス関係者から聞いたお話で印象深いものがあります。かつて日本の港には中国や台湾などから大型客船が多数来港していました。例えば、中国からは社員旅行で4千人が乗船した大型客船が来港することもあるそうで、貸し切りバスを100両用意してほしいというオーダーが入るそうです(貸し切りバスの場合、定員40人×100両=4千人という計算)。しかし、運転手不足のバス業界では、バス事業者複数社がバスの車両をかき集めて100両の確保はできても、バス運転手100人が集められず、結果的に100両のバスを用意するのが厳しい旨を伝えると、中国の客船は行く先を韓国に変更してしまったというのです。

 客船の乗客4千人が日本に上陸していた場合の経済効果を考えると大変残念です。当社のミッションであるバス運転手確保が観光、経済にも、多大な影響を及ぼす重要な課題であることを再認識させられました。

 このコロナ禍後に観光バスがV字回復するためには、観光産業の活性化が必須です。また、都市間移動の制限がなくなり、自由に往来できるようにならないと高速バスの減便を元には戻せません。さらに、対前年99%減のインバウンドの訪日が回復しなければ空港リムジンバスの乗客も増えません。特に最近、撤退が目立つホテルや旅館の送迎バスもこのままですと減る一方です。そして観光客も乗客となる路線バスもここまで頑張ってきたものの、今では最後の力を振り絞っているかのようにさえ感じられます。

 7月22日にスタートした「Go Toトラベルキャンペーン」を利用した宿泊者が延べ556万人に達しているとのこと。感染者を減少させねばならない一方で景気回復、経済の活性化も同時進行せねばならないという何とも複雑な状況です。効果の有無については意見が分かれるものの、東京都の除外が解除になることを待ち望む声も多く聞かれます。

 観光業も運輸業もとにかくもう後がない!という現況。新型コロナウイルス感染症が収束し、人々が自由に国内外を移動し、旅行や観光を楽しむ。そんな日が1日も早く訪れることを強く祈らずにはいられません。外国の方がコロナ収束後、観光に行きたい国の第1位は日本だそうです。外国人観光客の増加で頭を抱えていた頃を懐かしく感じますが、またそんな活気ある時を迎えたいものです。

 (リッツMC代表取締役社長兼女性バス運転手協会代表理事)

 
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