【交通トレンド分析76】首都圏終電繰り上げで国内線に影響も 航空・旅行アナリスト 鳥海高太朗


 新型コロナウイルス感染症の影響で、思わぬ形でテレワークの浸透、さらに「働き方改革」による残業の減少、さらにはコロナ禍で平日夜の会食や飲み会が減ってきたことでJR、私鉄各線の利用者が減少し、JR東日本が発表したデータによると、山手線の上野―御徒町間の内回りにおける0時台の利用者はコロナ前と比べて約40%減少していることを明らかにした。この傾向は首都圏のJR、私鉄の全てで見られる傾向であり、木曜、金曜の夜は比較的多くの利用者が見られるが、月曜~水曜および週末の夜の混雑度が大きく減ったことを私も感じている。

 今回、鉄道各社は終電~初電までの間に実施している鉄道の安全を守る保線作業の人員が減少傾向で一定の時間を確保したいという思惑もあり、2021年春のダイヤ改正から終電の繰り上げ、初電の繰り下げを実施することになった。JR東日本の首都圏では終電の繰り上げが17線区、初電の繰り下げが5線区で、初電から終電までの間隔を240分程度(約4時間)確保することを念頭にする。終電は、山手線で15~20分程度、京浜東北線で15~30分程度、東海道線で最大15分程度、一番大きな影響が出そうなのが中央線の中野以遠で約30分程度終電が早くなる。

 終電が早まることで残業や飲み会などを早く切り上げる必要が出るが、旅行やビジネス出張でも影響が出そうだ。JR東日本の発表資料を読むと、新幹線から在来線への乗り継ぎにおいて、現在は最終の新幹線からの乗り換えで到達できる駅でもダイヤ改正後は到達できないケースも出てくるそうだが、航空会社も同様の懸念をしている。羽田空港に国内線で23時前後に到着する便も多く、終電もしくは終電間際で自宅に戻る利用者も多い。飛行機の場合は遅延する場合もあることから、時間に余裕を持たせないと最終列車に間に合わなくなってしまうケースも出てくる。結果的に最終便を避ける利用者も出てくることになりそうだ。

 また、現在は多くの便が運休中の国際線でも羽田空港に22時台、23時台の到着便もあり、終電に間に合うように急いで空港を出る人も多く、その一部にも影響が出そうだ。航空会社関係者の中には、終電の繰り上げ以上に始発の繰り下げによって朝6時台、7時台の便への影響を懸念する声もあり、終電は繰り上げても始発は繰り下げしないでほしいという意見が聞かれる。

 最終的にはリムジンバスの充実でカバーするしか方法はないが、その議論もコロナが落ち着いてからになりそうだ。

 (航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第37回「にっぽんの温泉100選」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 1位草津、2位下呂、3位道後

2023年度「5つ星の宿」発表!(2023年12月18日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第37回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2023 年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2024年1月22日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒