8月22日の成田空港第1ターミナルのANA国内線チェックインカウンターに、久しぶりに人の姿が見られた。3月末以降、成田空港発着のANA国内線は全便運休。カウンターの電気も落とされている状況が約5カ月間続いた。
そんな中、ANAが昨年5月にハワイ線専用機として成田―ホノルル線に投入したエアバスA380型機「FLYING HONU」を使った約1時間半の遊覧飛行が実施された。7月下旬に遊覧飛行について発表され、有料での販売にも関わらず約300人の募集に対して約150倍の倍率となる人気ぶりだった。第2回が9月20日に実施されることも発表されるなど(すでに募集は締め切り)、「ウミガメ」をイメージした特別塗装機での遊覧飛行は大成功となった。
ANAのエアバスA380型機は3月26日以降、ホノルル線が運休となりお客さまを乗せての運航は行っていない。現在、ANAもJALも約9割の国際線が運休中で機体も余っている状況だ。一部国際線機材が国内線にも投入され、JALでは羽田―那覇、羽田―新千歳などの一部便で、完全フルフラットになるビジネスクラスを普通席に1000円の追加で利用できる「クラスJ」として使っているケースもある。
国内線で一部使用するという方法もあるが、国際線の大きな魅力はファーストクラスやビジネスクラスであり、今回のANAのA380型機の遊覧飛行でもファーストクラスとビジネスクラスが特に倍率が高かったそうだ。ファーストクラスは1席5万円、ビジネスクラスも最安3万円(窓側は3万5000円)という価格設定だったが、1時間半のフライトを実際に楽しめることを考えれば破格の料金設定だと思う。この価格であれば、夢のシート体験をしたいと考えるとともに、夏休みに旅行へ出かけられなかった親子の夏の思い出としても決して高くないだろう(エコノミークラスは最安1万4000円から)。
割安な料金設定であっても300人以上を乗せることで、収支の部分では利益を出すことが可能とのことだ。欲をいえば、日本全国を空の上から遊覧する4、5時間のフライトにして、機内では国際線で提供する機内食やワインなどを提供するなど、国際線気分を味わう遊覧飛行があっても面白いだろう。
少し割高な料金設定にしても国際線で利用するよりは割安となり、参加したい人も多いはずだ。加えて地方空港発着の遊覧飛行も含めて、機体が余っている国際線機材を使った遊覧飛行を新たな収益源として考えてみるのもいいだろう。
(航空・旅行アナリスト、帝京大学非常勤講師)