【一寸先は旅 人 宿 街 5】年齢制限あるの?青春18きっぷ 神崎公一


 「青春18きっぷって年齢制限があるのでしょう?」。旅行雑誌の編集長をしていた当時、何度となく質問されたのが、この年齢制限についてだった。

 小欄の読者には不要かもしれない。しかし、改めて記す。この切符は全国のJR線の普通・快速列車の普通車自由席などを自由に乗り降りできるのが売り物。誤解の元になる「青春18きっぷ」という名称でも年齢は関係ない。5枚つづり1万2050円。1人で5回乗ってもいいし、5人で一緒に旅をしてもいい。ただし、利用期間が限られるなどのいくつかの条件がある。新幹線や在来線特急などは使えないが、時間に余裕がある場合、とっくに青春を過ぎていても、子供でも使える。乗り鉄にも歓迎されている。

 さて、今夏もお盆休みを控えたほぼ1カ月前、JRのみどりの窓口が長蛇の列をなしていた。毎年おなじみの光景で、ゴールデンウイークや年末年始の休みの前も混雑する。何度も目撃したが、例えば「8月15日の昼すぎに仙台に着く新幹線に乗りたいのですけど。大人2人と子供1人です」などと、窓口の職員に頼む人もいる。こうしたやり方は時間も手間も掛かる。JRがみどりの窓口の設置駅を大幅に廃止する方向を打ち出している中で、窓口頼みの利用者はどうするのだろうと、他人事ながら心配になる。

 筆者は、インターネットによる切符予約システム「えきねっと」で乗車券と指定席券を確保し、券売機で受け取ることを常としている。予約は早朝、夜間でもでき、繁忙期は別にして、割引も受けられる。それだけに、窓口で切符を買うのは、あきれるばかりだ。

 もう一つ紹介しよう。筆者は短大で観光関連の講座を持っている。そこの学生たちにLCC(ローコスト・キャリア=格安航空)の事例を話したところ、大半が知らなかった。もっとも未成年の彼女らは、家族で旅行する機会が多かっただろうから無理からぬ話だ。数年前、筆者が利用した成田―福岡片道運賃4千円弱で飛べたことと併せて新幹線の東京―博多間の運賃を伝えると、どよめきが起きた。

 さらに8月掲載の小欄で取り上げたJR東日本のシニア向けサービス「大人の休日倶楽部」パス。期間限定の4日間、1万5270円でJR東管内の列車が新幹線を含めて乗り放題となる。この休日パスを知らないシニアの友人も多かった。「こんな得な切符を使わぬ手はない」と教えたところ、さっそく旅を楽しんできたと感謝された。

 今に始まったことではないが、旅行雑誌時代から、読者が”お得感”に極めて敏感なことははっきりしていた。「青春18きっぷ」や「1万円で泊まれる温泉宿」の特集を組んだ号は売れ行きが伸びた。長引く日本のデフレを象徴しているのだろうし、観光業は富裕層にターゲットをという議論があるのも承知している。

 しかし、庶民感覚としては、少しでもコストパフォーマンスの高い旅をしたいのが本音だ。新型コロナ感染症が拡大してから旅行需要喚起としてのGo Toトラベル事業や県民割の人気がそれをはっきりと証明している。

 こうしたお得切符やサービスを知っているのと、知らないのでは、お金も時間も損をする。これが消費者側・旅行者側の問題で、一方の観光・旅行業界もお得な切符を活用してもらって、もっと旅に出掛けてとアピールしてもいいのではないか。

 (日本旅行作家協会理事、元旅行読売出版社社長)

 
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