【マンスリーリポート 観光の現場 43】「東京解禁」どう影響 GoToトラベルで全国の旅館・ホテル


「良い流れができた」「実感ない」「格差顕著」の声も

 Go Toトラベルキャンペーンで今月1日、東京発着の旅行が支援の対象に追加された。全国の旅館・ホテルの入り込みにどう影響したか。Go To全般の評価、意見も含めて旅館・ホテル経営者に聞いた。

 「7月のGo Toスタート以来、毎日たくさんのお客さまにご利用いただいていたが、東京都の除外が解除された10月1日以降はせきを切ったように、さらに多くの皆さまがお越しくださっている」。こう語るのは東京からもアクセスが良い中部地方の旅館経営者だ。「大都市東京のパワーをプラス、マイナスの両面で痛感する日々」という。

 同じ中部地方の旅館経営者も「対前年で150%以上(の予約)」と、Go Toの東京解禁の効果を口にする。この地域は昨年の台風19号で予約のキャンセルが多発。その反動もあり、予約数は大きく伸びている。

 「9月から戻りつつあったが、10月からは非常に良い」とは東北地方の旅館経営者。「コロナの第2波が落ち着いたことと東京解禁、地域共通クーポン(の発行)と、良い流れができた」と好調の要因を分析する。「旅行に行っても良いという空気感になった」とも話す。

 東京に近い関東地方の観光地。「もともと首都圏からのお客さまが多いこともあり、東京解禁の効果は表れている」と、この地では比較的低廉な宿を営む経営者は言う。「当館では、特に週末は予約も増えてきたが、目につくのは在日外国人客が多いこと。今のところ半数以上が在日外国人のお客さまとなっている」。

 東北地方の高級老舗旅館は「8月中旬の段階で9月と10月の予約は毎日ほぼ満室。10月1日(の東京解禁)において変化を感じたかというと、あまり実感はない」(経営者)。同館ではGo Toが始まった7月からの予約数が前年同月を上回る状況が続いている。特徴的なのは、近場の客が増えていることだ。「7~10月は県内のお客さまが前年同月比200%以上の伸び。半面、東京からは40~50%減となっている」。

 九州の旅館経営者は「9月18日から(東京からの)予約受け付け開始となったが、やはり10月に入ってから東京のお客さまの動きが出たなという感覚」。

 一方、九州の同じ地域の経営者は、東京からの航空便の減便が続く状況から、「上向くことは確かだが、全体の宿泊人員を押し上げるにはまだまだ」。

 「ジェットコースターに乗っているようなここ半年」という関西の温泉地の旅館経営者。もともと大阪など関西圏の客が7割を占め、「当方は東京からは遠方のため、(東京解禁も)あまり影響はない」という。

 同じ関西の都市型旅館は「今のところ7月からの動きとあまり変わりはない。予約は紅葉の最盛期の11月20日あたりに集中している。クラスターなどのニュースが出ないかという意識が先立ち、まだ様子を見ている感じがする」。

■   ■

 10月1日にGo Toの東京発着の除外が解除された。このタイミングは適切だったのか。「Go Toトラベルを成功させるためには、早い時期での解禁が必要だったと思う。しかし、感染者の動向を考えると、今回の解禁時期が適当だった」「10月解禁は(都民の)お待ちいただく限界の期日だったのではないか」と、今回のタイミングを肯定的に捉える声が多い。「結論から言うと(Go To開始と)同時スタートでよかった」との声も聞かれた。

 新型コロナの感染者が多い東京からの宿泊者を受け入れるに当たり、不安がないかを聞くと、「地方においても感染症対策は徹底しているから特に不安はない」「しっかり感染対策をしていれば問題ない」「全く安心と言い切れないが、スタッフたちも自己管理にかなり神経をとがらせているので大丈夫」と、不安を感じる様子はほぼ見られない。

 一方で、「東京都の方に限らず、このご時世にあって、なおも感染予防意識が著しく欠如している方がいらっしゃると、従業員一同、何とも言えぬ不安といら立ちを覚える」と本音も。

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 Go To全般についての評価や意見も聞いた。

 Go Toの事業自体は「経済効果を考慮すると、非常にありがたい施策」と、ほとんどが歓迎の意を示し、終了予定の来年1月末以降の継続を求める声も多い。ただ、「必要な備品類がキャンペーン開始の前日に到着するなど、全ての面で段取りが悪すぎる」「地域共通クーポンのはんこ押しなど、無駄と思える手間が非常に増えている」「観光地域格差、宿の業態格差が顕著に出ている。中央のコントロールではきめ細かな対策は打てないから、やはり地方に任せる性格の施策だった」と、問題点も指摘する。

 継続実施を求める中では、「Go Toが終わった後の反動が恐ろしい。Go Toの延長をお願いするとともに、いきなり50%助成から0にするのではなく、35%、15%など、緩やかに着地させてほしい」「2月以降の延長があり得るなら、一律35%の制度変更をし、満遍なく宿泊事業者に恩恵が行き渡るようお願いしたい」などの要望があった。

都内の施設も恩恵はさまざま

Go Toトラベルキャンペーンで、東京発の旅行とともに、東京を目的地とする旅行も支援の対象に加わった。

 「(東京着旅行の)解禁報道以降、少なからず増加傾向にある」。東京都内の大型ホテルは自館の予約状況をこう説明する。同館はコロナ禍以降、客室稼働率が1桁台と低迷していたが、Go To開始のタイミングから少しずつ上昇。東京の除外解除が上昇に拍車をかけた。

 半面、都内の小規模旅館は「立地や金額から、一般の旅行者には使い勝手が悪いので、(予約に)ほとんど変化はない」と言う。「高級、高額な施設への予約に集中しているようで、われわれのような低廉施設は恩恵の額が低くなり、利用者にとってはインセンティブが少ない。定額制での補助であれば違っていたかもしれない」と、中小零細施設への配慮の必要性を強調している。

 
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