政府の国内旅行の需要喚起事業「Go Toトラベルキャンペーン」が22日に始まった。新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念される中での厳しいスタート。旅行市場の活性化への期待は大きいが、宿泊事業者や旅行業者には、感染拡大防止と集客を両立させる難題が突き付けられている。直近の感染状況から当面、東京都が割引事業の対象外となることも決まった。
ウィズコロナ 新しい旅行を
政府は17日、キャンペーンに起因する感染拡大を防ぐため、事業への「参加条件」として感染拡大防止策を宿泊事業者、旅行業者に義務付けると発表した。事業への参加登録の申請に際して、参加条件を満たしていることを誓約させる。
参加条件の具体的事項は、チェックインに際して旅行者全員に検温と本人確認を実施▽浴場や飲食施設などの共用施設の利用について人数制限や時間制限などを設け、3密対策を徹底―など。参加条件への適合をホームページやフロントに掲示するなど対外的に公表することも条件に加えた。
参加条件については、事前の現場確認などはないが、必要に応じて立ち入り検査の実施も検討する。後に参加条件を満たしていないことが発覚した場合は、事業への登録が取り消される。
政府は、キャンペーンを利用する旅行者に対しても順守すべき事項を設け、事業者にも周知するよう求める。観光関連団体が作成した「新しい旅のエチケット」を心掛けることなどが主な内容。「検温、本人確認、3密対策をはじめ感染予防」に関しては、事業者に協力することも要請する。
団体旅行に関しては、「若者の団体旅行、重症化しやすい高齢者の団体旅行、大人数の宴会を伴う旅行は控えることが望ましい」と周知する。これらは感染症専門家の提言を反映させ、一般的にリスクが高い旅行の類型として控えるよう例示されたもので、修学旅行をはじめとして感染予防策が徹底された団体旅行は事業の対象に含まれる。
感染拡大防止について赤羽一嘉国土交通相は17日の会見で、「東京都発着を対象外とすれば、感染症防止対策は万全という認識でいるわけではない」「ウィズ・コロナの時代において、安全で安心な新しい旅のスタイルをしっかりと確立し、普及・定着させたい」と述べた。同日には、宿泊業、旅行業などの観光関連の7団体の代表が赤羽国交相を訪れ、感染拡大防止と安心な旅行の両立に努める決意を表明した。
対象外の東京 被災地に配慮
政府は16日、直近の感染状況を踏まえ、東京都を当面の間、事業の対象外とすることを決めた。対象外となるのは、東京都の居住者による都内外の旅行と、他の道府県の居住者による東京都を目的地とする旅行。他の道府県の旅行者が、羽田空港や東京駅を経由したり、東京都内を通過したりした上で、東京都外で観光、宿泊する旅行などは事業の割引対象だ。
東京都を対象外とした措置について、赤羽国交相は17日の会見で、東京都内の観光関連事業者、都民に対し「このような形となったことは断腸の思い」と述べた。また、東京都を外すことに伴う事業効果の縮小については「一定の経済的な影響が出るが、安全対策上、やむを得ぬ措置」と説明した。今後、東京都が事業の対象に加わる要件などは現時点では未定。
事業の対象外となる東京都に加え、7月豪雨の被害を受けた地域についても、当面、事業の恩恵が受けられない恐れがある。政府は、旅行費補助に充てる予算規模が約1兆2千億円と大きく、事業期間が約6カ月と長期に及ぶことから、東京都や被災地などへの今後の支援、予算配分は十分に可能と説明している。
政府はもともと、全国各地に偏りなく事業効果が波及するよう、事業の執行を定期的に調整していく方針を示していた。時期や地域を区切って事業の利用状況などを把握しながら、予算配分を調整していく方向だ。
時期ごとの予算配分などについては、事業の事務局を担うツーリズム産業共同提案体を構成する日本旅行業協会などのマーケティングに関する知見を取り入れながら検討する。地域の配分については、国交省地方運輸局が管轄する九つの地方ブロックと沖縄県、東京都、大阪府、千葉県を区域として動向を把握し、調整する予定。
赤羽国交相の17日の記者会見。当面、東京都を事業の対象外とすることを発表。事業者がとるべき感染拡大防止策と、旅行者が心掛けるべきエチケットを紹介したボードを両側に置いて、Go Toトラベル事業の開始について説明した