【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み43】withコロナ時代における宴会・料飲部門の魅力向上策 観光品質認証協会統括理事 北村剛史


北村

北村氏

 2020年は、新型コロナウイルスによる感染症パンデミックの影響により、世界的に宿泊市場は大きな影響を受けました。この影響は、短期的には当面その直接の脅威が継続するであろうと予想されます。また、心理的脅威という意味においては、中長期的にも宿泊市場に影響を与えることが懸念されます。今後、継続して安全で安心な館内環境を整備することが求められるものと思われます。以下では、「3密」に繋がりやすい「宴会部門」や「料飲部門」について、今後求められるであろう対策を検討したいと思います。まず、宴会場についてです。宴会場の換気設備が高いレベルであれば、それを伝えることが重要と考えられます。そこで以下、弊会が実施しました調査結果をご紹介します(全国男女200名に対するインターネットアンケート調査、2021年2月、弊会調べ)。

1.宴会場やレストランの換気設備について

 アンケート設問:昨今、換気が重要と言われますが、例えば、「通常、換気レベルは1人1時間あたり30m3を求められていますが、弊社の宴会場・レストランではそれが100m3あります」と表現される場合、どのように感じますか。

 その結果、「使ってみようと強く思う」が6%、「使ってみようと思う」が17.5%、使ってみようとやや思う」が43.5%、合計で67%の回答者からの支持が見られました。個々の宴会会場の換気設備と収容人数設定のバランスについて、十分な換気レベルであると表現することができれば、強く顧客にアピールできる可能性がります。

2.宴会場の開口部+ランドスケープについて

 皆様の宴会場に開口部が設けられている場合、この開口部があることの安心感はこれまでと異なり、大きな「価値」を持つ可能性があります。安全性をしっかりと確保してそれを伝える他、さらに安心感に繋がる情報ついて、以下では、「開口部」と景観要素である「ランドスケープ」がある場合の心理的な効果を調査してみました。

 アンケート設問:宴会場等のスペースを「婚礼宴会」で使用することを想定してください。「その会場等に開閉できる(十分に換気もできる)大きな窓があり、景観を構成する庭等の眺望がある。」

 その結果、婚礼宴会について、「大変重視する」との回答者割合が20%(男性は15%、女性が25%)、」やや重視する」との回答者割合が41%という結果でした。ちなみに、さらにテラスがあって外に出ることができる場合は、男性の大変重視する人の割合が18%という結果でした。また、付加価値は、追加料金を支払ってもよいと回答した人の割合が約65%であり、その平均額は、約1,615円/人という結果でした。以上のとおり、換気もできてランドスケープとセットとなる十分な大きさを有する開口部を有することで、その会場に強い安心感を与えることができ、その効果はおそらく以前に増して強いものと予想できます。

 次いで、一般宴会や会議で宴会場を使用する場合の上記効果を見てみたいと思います。

 アンケート設問:宴会場等スペースを「一般宴会や会議等」で使用することを想定してください。「その会場等に開閉できる(十分に換気もできる)大きな窓があり、景観を構成する庭等の眺望がある。」

 その結果、「大変重視する」との回答者割合が17%、「やや重視する」との回答者割合が38%であり、重視する人の合計割合は55%と、婚礼宴会よりも低下しているものの、過半数から支持されています。付加価値は、追加料金を支払ってもよいと回答した人の割合が約54%であり、その平均額は、約1,410円/人という結果でした。

 なお、景観構成要素等のランドスケープがあり、且つテラス等で外にまで出ることができる場合の効果も調べてみましたが、それらについては、上記とほぼ同等という結果でした。つまり、ランドスケープが存在すること自体で、また開口部があって安心感があること自体に大きな付加価値が生じているものと考えることができます。

3.レストランの開口部+ランドスケープについて

 レストランについても、上記同様に調査結果をご紹介します。

 アンケート設問:レストラン等の飲食施設を使用することを想定してください。「その空間に開閉できる(十分に換気もできる)大きな窓があり、景観を構成する庭等の眺望がある。」

 その結果、「大変重視する」との回答者割合が19.5%、「やや重視する」との回答者割合が40%であり、重視する人の合計割合は59.5%という結果でした。付加価値は、追加料金を支払ってもよいと回答した人の割合が約52.5%であり、その平均額は、約1,313円/人という結果でした。

 ちなみに、上記与件に加えて、テラスがありそこで喫食できる場合にいては、「大変重視する」との回答者割合が16.5%、「やや重視する」との回答者割合が39%であり、重視する人の合計割合は55.5%という結果でした。付加価値は、追加料金を支払ってもよいと回答した人の割合が約50.5%であり、その平均額は、約1,321円/人という結果でした。

4.コーヒーラウンジ及びバーの開口部+ランドスケープについて

 コーヒーラウンジやバーについても、上記同様に調査結果をご紹介します。

 アンケート設問:バーやコーヒーラウンジ等を使用することを想定してください。「その空間に開閉できる(十分に換気もできる)大きな窓があり、景観を構成する庭等の眺望がある。」

 その結果、「大変重視する」との回答者割合が18%、「やや重視する」との回答者割合が36.5%であり、重視する人の合計割合は54.5%という結果でした。付加価値は、追加料金を支払ってもよいと回答した人の割合が約44.5%であり、その平均額は、約1,201円/人という結果でした。

 レストランと同様、上記与件に加えて、テラスがありそこで喫食できる場合にいては、「大変重視する」との回答者割合が15%、「やや重視する」との回答者割合が38%であり、重視する人の合計割合は53%という結果でした。付加価値は、追加料金を支払ってもよいと回答した人の割合が約45.5%であり、その平均額は、約1,157円/人という結果でした。

 ここで、開口部+ランドスケープの付加価値を比較し整理しますと、宴会場(婚礼)は追加支払許容割合65%、1,615円/人、宴会場(一般宴会・会議)は、追加支払許容割合54%、1,410円/人、レストランは、追加支払許容割合52.5%、約1,313円/人、ラウンジ・バーは、追加支払許容割合44.5%、1,201円/人でした。このように宴会部門及び料飲部門について、開口部及びランドスケープを有する場合あるいは新たに設置することができれば、一定の集客効果が期待できる可能性があります。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史

 
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