【ポスト・コロナ時代に向けた宿泊施設の取り組み33】アフターコロナ宿泊市場における感染症対策とは 観光品質認証協会統括理事・サクラクオリティマネジメント代表取締役 北村剛史


北村氏

 新型コロナウイルス感染症の症例が最初で世界に報告されたのが2019年12月8日でした(WHOより)。それから1年以上が経過します。新型コロナウイルスは気温の上昇及び湿度の上昇に比較的弱いと報告されており、また有効性及び安全性の高いワクチンが普及する年となれば、2021年度こそ、アフターコロナ元年となるのではと期待されています。今回は、2021年がアフターコロナ元年となった場合のアフターコロナ宿泊市場における感染症対策について考えてみたいと思います。今回の新型コロナウイルス感染症は、世界規模でその脅威を心理的にも深く刻むパンデミックを引き起こしました。その結果、弊社が実施したアンケート調査において、今回の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが終息したとしても、継続して消毒等をしてほしいという回答が非常に多いという結果でした。エントランスにおける適正濃度の消毒薬設置や客室における高頻度接触部位に対する消毒の実施、レストラン等でのテーブル消毒等は求められる、つまり継続が必要だと思われます。

 2021年度、新たに重要となる運営戦略の一つに、実践する感染症対策の「見える化」が挙げられます。感染症対策の実践は、どこを消毒しているのかを判別することはできません。したがって、どこまでをどのように消毒しているのかを示す消毒ステッカー、あるいはレストランにおけるテーブルの消毒では、「作業」としての消毒ではなく、丁寧でキビキビと手慣れていて且つ正しい消毒を実践しているスタッフの姿が見られるような場合、その姿は顧客の心に残り、口コミコメント等でもポジティブコメントとして拡散する可能性があります。それらを含め感染症拡大防止対策の「見える化」が今後重要となるはずです。その他ハードウェアに関しては、既存施設であれば、空調換気で使用されているエアフィルターの確認及び見直しや、抗菌コーティング、HEPAフィルター付き空気清浄機の設置や非接触型サービスデバイスの導入等が進むものと思われます。また、新規ホテル開発ではゼロベースでの構築が可能ですので、再度の感染症拡大脅威に備え、客室や宴会場について高い換気力を有する設備の設置等の検討が必要となるはずです。

 上記のような取り組みや検討の他、今後一層「災害」に対する取り組み強化も求められます。災害は、地震等の自然災害や火災、大気汚染、水質汚濁、労働災害、交通災害、管理災害、環境災害等の人為災害、またそれら以外の化学物質の漏洩等が要因となって生じる特殊災害の3つに分けられます。新型コロナウイルス感染症はこの特殊災害に位置づけられます。アフターコロナ宿泊市場では災害対応力の向上が一層求められるはずです。そのためには、宿泊施設として地域にどのような貢献ができるのか、また住民の生活の質の向上にどのような貢献ができるのかを自問し積極的に所在する地域との有機的な連携を追及する姿勢、つまり宿泊施設の地域性が今後一層重要なサービス要素となるはずです。

一般社団法人観光品質認証協会 統括理事
㈱サクラクオリティマネジメント 代表取締役
㈱日本ホテルアプレイザル 取締役
不動産鑑定士,MAI,CRE,FRICS 北村 剛史

 
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